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胎内で診断、救命可能に子どもの重い心臓病重要な家族のケア 

2017.2.14 10:05
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 かつて命を助けるのが困難だった子どもの重い心臓病は、主に超音波(エコー)検査の進歩で、母親の胎内にいるうちの診断が増え、救命の可能性が格段に高まった。一方、誕生前から子どもの重病に直面する家族の戸惑いや不安は強く、そのケアも重要だ。心臓病の胎児診断とその後の対応に力を入れている神奈川県立こども医療センター(横浜市)を取材した。

胎内で診断、救命可能に子どもの重い心臓病重要な家族のケア
▽直ちに手術
 「何か病気があるかもしれません」。神奈川県に住む平津信子さん(29)は、妊娠が分かって間もない2014年12月の検診で、産科医にそう告げられた。赤ちゃんの体にむくみがあるという。

 妊娠8カ月で赤ちゃんの心臓に異常が見つかり、こども医療センターを紹介された。詳しいエコー検査をした医師は「生まれてすぐ手術が必要です」と言った。診断は「重症大動脈弁狭窄症」。心臓と大動脈をつなぐ場所にある弁の異常で血液の通り道が狭く、全身に十分な血液が行き渡らない。治療しなければ生後数日で死に至る重い病だ。

 心臓血管外科や麻酔科など多くの専門医によるチームができ、治療計画が立てられた。状況によっては救命できない可能性も伝えられた信子さんは、ひそかにみとりの準備まで整えて帝王切開の日を待ったという。

 15年6月、同センターで産声を上げた光希ちゃんは直ちに呼吸器につながれ、大動脈弁を広げる手術を受けた。約4カ月で退院。昨年末で1歳半になり、酸素吸入をしながら穏やかに暮らす。

 「妊娠中はつらかったけれど、病気が分かっていなかったらこの子はここにいなかったかもしれない」と信子さんは胎児診断に感謝している。

▽技術向上目指す
 麻生俊英・心臓血管外科部長によると、同センターで04~15年に生後24時間以内の緊急手術が必要だった心臓病の78例中、8割近い61例が胎児の段階で診断された。「胎児診断率がここまで高い施設は少ない」と同部長。

 胎児診断に詳しい同センター新生児科アドバイザーの川滝元良医師によると、エコー検査で心臓の形状が比較的詳しく分かるのは妊娠18週ごろから。本来は二つある心室が一つしかないなど、重症な病気ほど見つかりやすい。

 だが誕生後早期の治療が必要でも、胎児の段階での診断が技術的に難しい心臓病もある。胎児の心臓は小さい上に心拍も速く、エコーでの診断には経験や技量が必要だ。

 診断技術を全国的に向上させようと、川滝医師らは各地の大学病院や産院などをインターネットでつなぎ、画像上で異常を見分ける研修を実施している。一度に300人余りが参加することもあるという。

▽納得の選択を
 思いがけず赤ちゃんの病気を告知され、限られた時間でさまざまな決断を迫られる家族へのサポートも欠かせない。

 小学1年の岡本真優さん(6)は誕生前に同センターで心臓病と診断され、1歳でペースメーカーを着けた。母親の愛子さん(42)は「主治医の先生は時間をかけて説明してくれ、納得いくまで質問もできた。医学だけでなく、人としての経験値がないとできないと思う」と振り返る。

 多くの患者、家族の支援に当たってきた看護師の権守礼美さんによれば、赤ちゃんの心臓に異常があると聞いて出産をためらう妊婦も少なくない。

 「当事者の不安や戸惑いに寄り添いながら、エコー検査が赤ちゃんの救命のために発展してきたこと、心臓病を抱えた他のお子さんたちの成長ぶりなどを伝えている。正しい情報を提供し、納得の上で選択してもらえるよう支援していきたい」と話した。
(共同通信 佐分利幸恵)

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