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医療新世紀

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働き盛り世代に多く発症知られていない精巣腫瘍患者会つくり支援

2017.5.2 9:24
 精巣腫瘍は日本では少なく、実情があまり知られていないがんだ。がんの中では比較的治る割合が高いが、20~40代の働き盛りの男性で発症することが多い。仕事や家庭生活にも支障が出て悩みの深い患者に、治療や闘病の実際の姿を伝えられないか。この病気を経験した人たちが患者会をつくり、新しい患者の相談に乗るなど支援を始めている。

働き盛り世代に多く発症知られていない精巣腫瘍患者会つくり支援
▽病気の実態
 精巣腫瘍に詳しい済生会滋賀県病院の三木恒治院長(泌尿器科)によると、成人男性の精巣にできる腫瘍の大半は精子になる前の未成熟な細胞から発生する。日本人では人口10万人当たり1~2人程度とまれな病気だ。

 三木さんは「患者が気付くきっかけのほとんどが精巣(睾丸)の腫れ。片方だけが腫れて痛みはないことが多い」という。感染症などと紛らわしいが、比較的硬いしこりが特徴で、後腹膜のリンパ節や肺に転移してから見つかる場合もある。

 腫瘍が疑われる場合、手術で精巣ごと摘出するのが標準的な治療法。摘出した組織を調べて腫瘍の特徴を確かめ、抗がん剤の治療に進むか、経過観察するかを決める。血液中の3種類の腫瘍マーカーを定期的に調べ、再発の有無や悪性度を見極めるのが大事になる。

 精巣腫瘍には、幾つかの抗がん剤が有効であることが分かっており、最初の薬が効かなくても治療の選択肢がある。三木さんは「吐き気など副作用を抑える薬も進歩した。つらくても諦めずに治療を続けるのが大事です」と強調した。

▽情報探し回り
 ただ、治療が長引くと就労や家庭生活にも支障があり、1人で悩む患者も多い。そこで三木さんが経験者に呼び掛けて2010年「精巣腫瘍患者友の会 J―TAG(ジェイ・タッグ) 」(大阪市)が設立された。

働き盛り世代に多く発症知られていない精巣腫瘍患者会つくり支援
 代表を務める会社員、改発厚さん(45)は32歳の時に発症した。腫れに気付いたが重大だと思わず、数カ月放置した。腰痛が起き、首にしこりができてから受診し、すぐに手術を受けることに。腹部リンパ節への転移が見つかり、医師には手術後の抗がん剤による化学療法を勧められた。

 「『7~8割治る』と言われたが、抗がん剤は怖くて嫌でした」と改発さん。同じような病状の人がいないか、インターネット上で情報を探し回った。他の患者の参考になればと自身もブログを開設した。一進一退のつらい治療に「家族の行く末を考えたり、ブログが遺書のようになったりした」という。

▽会員求む
 何度も抗がん剤を変えて1年半。ようやくがんが消えた改発さんは、自身の経験から「診断直後は頭が真っ白になる。薬の効果と副作用、治療の進め方、どの病院が経験豊富か。知りたいことはたくさんあるが、どこを頼っていいのか分からなかった」と説明する。

 友の会のウェブサイトでは専門医による解説動画を公開し、診断や検査、治療の実際の進め方を詳しく紹介。さらに経験者の体験談をまとめて掲載している。

 また、京都府立医大と筑波大では付属病院で定期的に患者相談会を開き、既に60回以上の実績がある。患者の妻や母親が訪れることも多いという。相談会ではJ―TAGのロゴの入った旗に参加者が寄せ書きし、なかなか会えない患者同士の連帯を確認し合っている。

 悩みは、活動的なメンバーが少ないこと。相談会ももっと増やしたい考えで、できるだけ多くの患者を支えられるよう、経験者の新会員を求めている。三木さんも「医師の説明とでは、患者に訴える力が違う」と患者会活動の広がりに期待している。
(共同通信 由藤庸二郎)

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