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医療に「賢明な選択」を患者と対話、過剰見直す米国発の活動へ関心 

2017.6.27 10:33
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 その画像検査は本当に必要か。薬の量は適切なのか―。医療の「賢明な選択」を探ろうという米国発の活動が国内でも広がり始めた。医師が患者と対話を深め、無駄を省いて副作用を防ぎ、医療の質を向上させる試みだ。
医療に「賢明な選択」を患者と対話、過剰見直す米国発の活動へ関心
 ▽副作用の連鎖

 「あまりにも処方薬が多過ぎる」。群星沖縄臨床研修センター(沖縄県浦添市)の徳田安春医師が2年前、関東地方の病院に勤めていた時のことだ。重症で転院してきた80代の男性は統合失調症やパーキンソン病など複数の疾患があり、薬を16種類も処方されていた。

 徳田医師は一つ一つの薬がいつ、どんな症状の段階で処方されたかを調べた。すると、鎮静剤や抗精神病薬で飲み込む力が衰え、パーキンソン病の薬が便秘を招き下剤が処方され...と副作用の連鎖が起きていることが分かった。慎重に観察しながら薬を3種類に減らすと、男性は自力で食事を取れるまでに回復した。

 「必要な薬は使うべきだが、選別と選択が必要」と徳田医師。米国発祥の「Choosing Wisely(チュージングワイズリー、賢明な選択)」という活動に触発され、国内普及の旗振り役となってきた。

 ▽五つのリスト

 米国では「治療の30%は不要」との推論もあり、患者の体に負荷が大きい過剰医療は改めるべきだとの声が医療界でも2010年ごろから高まっていた。それに応えて臨床医たちが無駄な治療の撲滅に立ち上がったのが、12年に米内科専門医機構財団が始めた「賢明な選択」キャンペーン。同財団の呼び掛けに、内科学会や小児科学会などが見直すべき診療行為を五つずつ挙げ、インターネットで公開。科学的根拠も明示した。

 「五つのリスト」と名付けられ、現在では70を超す学会が参加。計500近い項目がリストアップされている。「頭痛で脳波検査をしない」「明らかなウイルス性呼吸器疾患に抗菌薬を使わない」「20歳以下の女性に子宮頸がん検診をしない」などを列挙。活動はカナダ、イタリア、英国、オーストラリアなど10カ国以上に広まった。
医療に「賢明な選択」を患者と対話、過剰見直す米国発の活動へ関心
 日本でも昨年10月「チュージング・ワイズリー・ジャパン」(CWJ)が発足。今年6月1日には日本医学会がシンポジウムで取り上げた。

 ▽一緒に決める

 CWJ代表で佐賀大名誉教授の小泉俊三医師(京都市)は「医療費削減が目的と誤解しないでほしい」と話す。「大事なのは患者と医師がじっくり考え、望ましい医療を一緒に決めること」と強調する。


 賢明な選択のリストを参考に、根拠に乏しい検査や投薬を漫然と続けるのを避け、効果が高く副作用の少ない医療を実現するのが目的。医師が治療方針を一方的に押し付けるのでなく、患者の価値観も踏まえ意思決定を共有することを目指す。

 過剰医療の背景には、出来高払いの診療報酬制度や、医療過誤訴訟に医師が身構える実情もある。「念のため、と医師はやり過ぎてしまうが、過ぎたるは及ばざるがごとしだ」(小泉医師)

 市民・患者の立場からCWJに参加する医療ジャーナリストの北澤京子・京都薬科大客員教授は「早期発見と早期治療を患者は望むが、過剰診断や過剰治療のデメリットも伴う」と指摘。「患者が納得できる治療方針の決定につながる」と活動の意義を語る。

 CWJは今後、国内の学会に「五つのリスト」を挙げてもらうよう働き掛ける考えだ。一般市民の会員も募集中。問い合わせはメールでchoosingwiselyjapan@gmail.comへ。

(共同通信 内田泰)

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