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難聴のリスクも知っておたふくかぜ、軽視は禁物専門家はワクチン勧める 

2017.9.26 21:12
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 4~5年おきに大きな流行があるおたふくかぜは「子どもの軽い病気」と誤解されがちだ。中でも合併症の難聴は、改善が困難なのに実態が知られていないとして、日本耳鼻咽喉科学会が全国調査を実施、過去2年に300人以上が発症したことが分かった。おたふくかぜに特効薬はないが、予防ワクチンはある。専門家は「ワクチンは自然に感染するよりはるかに安全。ぜひ接種を検討して」と呼び掛ける。

 ▽氷山の一角か

 おたふくかぜの正式名は流行性耳下腺炎。ムンプスウイルスによる感染症で、せきやくしゃみのしぶきを吸い込んだり、手についたウイルスが口に入ったりして広がる。耳の下の耳下腺の腫れや痛み、発熱が主症状で、発症前から感染源になるため、患者を隔離しても広がりは止められない。

難聴のリスクも知っておたふくかぜ、軽視は禁物専門家はワクチン勧める
 学会が、流行した2016年と前年について調べたところ、全国約3500の耳鼻科で336人が難聴と診断され、詳細が判明した314人のうち261人(約8割)が生活に支障があるレベルの症状だった。患者は5~10歳を中心に子どもが多いが、30代にも発症の小さな山があった。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「調査で数字が明らかにされた意義は大きい。ただ、特に難聴が片側の場合、幼児などは発見が遅れがちになる。この数は氷山の一角かもしれない」と話す。

 ▽予防可能なら

 東京の総合診療医、稲田美紀さん(43)は、5歳でかかったおたふくかぜの合併症で、左耳が全く聞こえない。耳下腺の腫れや熱はほとんどなく、「軽かったね」と喜んだ数カ月後、祖母からの電話を受けて受話器を左耳に当てたら、何の音もしなかった。

 母に連れていかれた大学病院で耳鼻科の教授に「治りません」と宣告されたが、「片方が聞こえなくても、医者にはなれますよ」と慰められた。

 猛勉強し、医者になる夢はかなえた。しかし右耳だけに頼る生活の不便は多い。少しにぎやかな場所では人の話が聞き取りにくい。左側からの声が聞こえないのを「無視している」と職場で誤解されたことも。「残る聴力も年齢とともに低下しています」と稲田さん。

 自身の子ども時代と違い、現在はワクチンがある。おたふくかぜに限らず、予防できる病気はできるだけ予防してほしいと、患者にはワクチンを勧めている。

 ▽比較してみて

 おたふくかぜのワクチンはウイルスを弱毒化した生ワクチンだ。1989~93年の間は、はしか、風疹との混合ワクチンとして原則無料の定期接種だったが、発熱、頭痛、嘔吐(おうと)などが主症状の無菌性髄膜炎の副作用が問題になり、中止された。以降はおたふくかぜワクチン単独の任意接種となり、接種率は30~40%に低迷。このため定期接種が広く導入されている他の先進国でほぼなくなった流行が、日本では繰り返し起きているとされる。
難聴のリスクも知っておたふくかぜ、軽視は禁物専門家はワクチン勧める

 厚生労働省の審議会は2013年、おたふくかぜワクチンの定期接種化に向け、今より安全で効果の高いワクチンの開発を企業に促したが、実用化に向けた具体的な動きはまだ見えない。

 国立感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子室長は「より良いワクチンの開発は必要だが、現行ワクチンも自然感染と比較すれば安全性は高い」と指摘した上でこう話す。「思春期以降の男性が初めておたふくかぜにかかると、つらい痛みがある精巣炎が20~40%にみられるが、ワクチンではほとんど起きない。難聴もワクチンでは頻度が不明なほどまれ。問題と指摘される無菌性髄膜炎も自然感染よりずっと少ない。こうしたことを踏まえてワクチンについて考えてみてほしい」

(共同通信 吉本明美)



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