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自殺予防、まず心理背景知って 精神科医らが手引

2018.7.24 0:00
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 生活の困窮をはじめ、自殺に追い込まれるリスクが高い問題を抱えた人々を支援する際、どんな心得が必要か。それを簡潔に記述した手引を、自殺予防に取り組んできた精神科医らが厚生労働省の事業としてまとめた。

 支援が必要なのに拒絶するなど、一見不可解な当事者の行動についても心理的背景を解説。専門の壁を越え根気よく支援に取り組むよう促している。読んだ人たちから「広く知らせたい内容」と好評だ。

 ▽ワンストップ

 
 

 警察庁と厚労省によると2017年の自殺者は2万1321人。8年連続で減少したが、人口10万人当たりの自殺者数は16・8で、政府が目指す欧米諸国並みの13・0には届かない。

 「ワンストップ支援における留意点―複雑・困難な背景を有する人々を支援するための手引き」は、長崎県で自殺対策に長く関わり、現在は川崎市児童家庭支援・虐待対策室担当部長の大塚俊弘医師(精神科)を中心に医療者、法律家、支援団体関係者、遺族ら約30人が協力して編集。相談のたらい回しを防ぐ大切さを強調するため「ワンストップ」と掲げた。

 ▽特性の理解を

 取り上げた問題は、生活困窮のほか虐待、ドメスティックバイオレンス、アルコールや薬物への依存、多重債務など。問題の当事者によく見られる行動の特徴や、支援のポイントを示した。

 例えば、子どもの頃から繰り返し暴力などの虐待を受けたり、生活困窮が長期にわたったりして、まさに支援を必要としているはずの人が、支援者に攻撃的な態度を取ったり、途中で連絡が取れなくなったりすることがある。なぜなのか。

 手引は、危機的状況が続くと、物事に恐怖や不安で対処しがちとなり「戦うか逃げるか」という行動様式が身についてしまうためだと解説する。

 「これは過酷な体験への正常な反応と考えられており、本人がコントロールするのは難しい。こうした行動の背景が分かると支援者も納得できるし、さらに本人も知識を共有できれば、建設的な対処法を探る一歩になる」と大塚さんは話す。

 困難な状況に陥ったことを「恥」と思う人も多い。「なぜそんな状況に?」と尋ねるのではなく、最初に「今までよく頑張りましたね」と苦労をねぎらい、信頼関係を築くことの重要性も強調した。 

 
       手引の表紙

 

 ▽誰でも読んで

 大塚さんは昨年以降各地に出向き、手引の内容を広めようとしている。

 川崎市の研修に参加した福祉職員は「支援しにくい事例にどう対応すべきか、基本が整理できた」と話す。秋田県で開催されたセミナーでは参加者から「手引の内容を理解している行政担当者を増やしてほしい」と要望が寄せられた。

 大阪市を拠点に精神障害者の就労支援に携わる精神保健福祉士、三原卓司さん(48)は「社会的偏見が強いような問題を抱えている人への支援には共感する姿勢が欠かせない。手引があることで相手の心理背景が理解しやすくなり、専門外の問題でも対処の糸口になる」と評価した。

 大塚さんは「相談窓口につながることができない高リスク者も少なくない。一般の人にも手引を読んでもらい、自殺のリスクは偶然が重なれば誰もが直面し得るのだということを知ってほしい」と話している。

 手引は昨年初版を発行、今年3月に新しい章を加えて改訂した。精神科医らでつくる「日本うつ病センター」のホームページからダウンロードできる。問い合わせは同センター。電話03(6256)8411。

(共同通信 吉本明美)

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