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筋ジス新薬、臨床段階に 開発進む核酸医薬品

2018.8.14 11:00
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 全身の筋肉が徐々に減っていく難病筋ジストロフィー。その最も重症な「デュシェンヌ型」に対する新しい薬の開発が進み、患者に投与される段階を迎えた。中心になっているのは、次世代の薬として注目される「核酸医薬品」。日本でも2種の候補薬の臨床試験(治験)が行われ、第一関門である安全性については確認できたとしている。

 
 

 ▽次世代バイオ薬

 デュシェンヌ型は、男児5千人に1人の割合で発症する希少疾患だ。遺伝子の異常で「ジストロフィン」という重要なタンパク質を体内で作れないため、幼少期から運動機能や呼吸器などの障害が進行していく。根治療法はなく、30~40代で死亡することが多い。

 筋ジス治療法の研究開発に長く取り組んできた国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の武田伸一理事によると、核酸医薬品がデュシェンヌ型の治療に使えそうだという機運が高まったのは2009年ごろから。

 核酸医薬品は、遺伝子の構成成分である核酸を活用し、遺伝子の働きを抑えたり促進したりする。遺伝子に原因があるさまざまな難治疾患に治療の可能性を開くバイオ医薬品として、世界中で研究されている。

 ▽「軽症化」戦略

 どう治療するのか。代表的なのは「エクソンスキップ」という手法だ。

 エクソンは遺伝子の部品のようなもの。スキップは「飛ばす、抜かす」といった意味だ。核酸医薬品を投与し、遺伝子の中の異常なエクソンを飛ばして遺伝情報を読み取ると、完全ではないが機能するタンパク質ができる。病気の進行前に投与すれば「治すことはできないが軽症にすることはできるのではないか」(武田さん)との戦略だ。

武田伸一氏
     武田伸一氏

 どのエクソンに異常があるかは患者によって異なる。武田さんらNCNPチームはその一つをスキップする核酸医薬品を日本新薬(京都市)と共同で開発。症状を再現した犬に投与したところジストロフィンが作られ、歩行機能も保たれた。

 13年から、6~16歳の患者10人を対象に、安全性を確認する第1段階の治験を始めた。週1回、12週間にわたり点滴で投与した結果、深刻な副作用はなく安全性に問題なしと判断された。そこで患者数と投与量を増やし、投与期間を延ばした第2段階の治験に進み、有望な結果を得て詳細を解析中だという。

 第一三共(東京)も、別のエクソンを標的にした第1段階の治験を終了。今年4月に「安全性は確認できた」との結果を発表している。

 ▽迅速に募集

 NCNPチームの治験では、患者を迅速に募集できる、筋ジスなどの患者登録システムが活用された。英語名の頭文字から「Remudy(レムディー)」と呼ばれる。

 
 

 通常の治験では、協力医療機関からの情報提供や広告、インターネットなどを通じ、参加する患者をその都度募集するが、筋ジスのような希少疾患では効率が悪い。そこで患者をあらかじめ登録しておくレムディーを始動させた。現在、約1700人のデュシェンヌ型患者が登録している。

 研究者や企業が、どんな病状の患者が多いかなど個人情報と切り離した統計情報を見ることもできる。「募集の迅速化だけでなく、日本の患者の現状が分かることで、企業が新薬開発について決断しやすくなるという機能もある」と担当の中村治雅NCNP臨床研究支援室長。

 デュシェンヌ型に対する核酸医薬品は、米国で16年に承認を受けた例があるが、専門家から有効性に疑問が呈されるなど、完成の域に達したとは言い難く、今後の開発に期待がかかる。武田さんは「安全性をクリアできたのは大きな一歩。今後も着実に開発を前進させたい」と話す。

(共同通信 吉本明美)

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