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「病、それから」浅野史郎さん(前宮城県知事) 運命受け入れ「患者道」貫く 

2018.7.31 12:48
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 3期12年務めた宮城県知事時代には「改革派」と呼ばれた浅野史郎さん(70)。2005年11月に辞めた後は大学教授やテレビのコメンテーターとして活動していたが、血液のがんの一種である成人T細胞白血病(ATL)を発症、その「闘い」を乗り越えた。

浅野史郎さん
     浅野史郎さん

 ×   ×   ×

 この公園は自宅から歩いて17分の所です。毎朝1周760メートルの遊歩道を歩いた後に、集まったみんなでラジオ体操するのが日課です。

 ▽切り替え

 ATLを引き起こすウイルス「HTLV1」の感染を知ったのは、知事だった04年です。献血の検査で判明しました。ウイルスに感染しても発症率は5%ぐらいと聞いたので、そんなに深刻には考えなかった。

 発症を告げられたのは5年後の09年5月25日。妻に言われ、定期的に検査を受けていたので分かりました。その年は3月の東京マラソンを完走し好調だったんですが…。一時は混乱しましたが、すぐ切り替えました。

 低い発症率なのに自分が選ばれたから悪い運はもう使い果たした。今61歳。70歳を超えていれば厳しい治療には耐えられないはず。ぎりぎりのタイミングでの発症だ。

 そう考え運命として受け入れ「病気と闘って絶対勝つんだ」と決意しました。「この先どうなるのだろうか」など余計なことは一切考えませんでした。これが闘病中の精神的安定につながったと思っています。

 ▽前向きに

 翌月入院し抗がん剤治療を受けた後、骨髄移植に移りました。移植を受ける私の方は骨髄液の注入程度で終わりますが、提供するドナーは大変な負担だと知りました。無償の行為に何度も感謝の言葉を口にしました。

 病気については、セカンドオピニオンも聞いてできるだけ理解しようとしました。いい患者になる「患者道」を究めようと。こちらがじたばたしていると、治療する医者らも不安になるでしょ。後々「根拠なき成功への確信」とも表現していますが、前向きにATLと向き合いました。

 退院は10年2月です。移植後の合併症の一つ、肺炎でその後2回入院しました。免疫力が落ちているので感染症になると危ない。家じゅうの消毒や掃除などで、妻は大変だったと思います。

 退院後は週に1度血液検査をしていましたが、それが2週間に1度、今では2カ月に1度です。「異常なし」がずっと続いていて、私は「治った」と思っています。友人にも「最近、髪の毛が増えたね」と言われます。

 ▽散歩から

 私は人生の出来事を割に運命と受け止めます。病気だけでなく、厚生省(現厚生労働省)に入り在米大使館勤務などを経て「障害福祉課長」となって一生取り組む障害福祉に出会ったこと、現職が逮捕されて辞職した宮城県の知事選に立候補したこともそうです。

 大学では地方自治論の授業と障害福祉論のゼミを持っています。慶応大教授時代に立ち上げた「ぷれジョブ藤沢」のボランティアも続けています。知的障害がある中高生がパン屋やコンビニなどいろいろな場所で週1回1時間、仕事を体験するのがぷれジョブです。

 障害者が普通に暮らせる街づくりが私のライフワークです。これからも求められる限り、できる限り仕事に打ち込みたいと思っています。

 入院前は、気持ちを前向きにするため、大変な仕事の前には必ずジョギングをしていました。再び走れる体に戻すことが退院時の夢でしたが、脚の筋力はなかなか戻りません。「千里の道も散歩から」と歩いています。

(聞き手 共同通信・諏訪雄三、写真 同・藤井保政)

◎浅野史郎さん 1948年生まれ、仙台市出身。東京大卒。70年に厚生省に入り障害福祉課長などを歴任。93年宮城県知事選初当選。退職後、慶応大教授などを経て現在は神奈川大特別招聘教授。著書に「疾走12年 アサノ知事の改革白書」「運命を生きる」。

◎成人T細胞白血病(ATL) 白血球の一種T細胞に感染するウイルス「HTLV1」が原因の白血病。感染経路は母乳、性交渉、安全対策前の輸血。感染者の95%は生涯発症せず潜伏期間も数十年と長いが、発症後急速に進行する場合もある。

 

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