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研究進む脊髄損傷リハビリ 「再生医療後」見据え  学会が基準作成へ

2018.5.15 11:00
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 脊髄損傷でまひした手や脚を再び動かすためのリハビリの研究が活発化している。実現が期待される人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療は、リハビリと組み合わせることで効果が上がると考えられているからだ。個々の医療機関の取り組みに加え、専門学会も基準づくりに動き始めた。

 ▽運動の回復は別

 事故などで脊髄の神経細胞が傷ついて機能が失われると、回復は困難とされていることから、現在の医療は、動く部分の機能を高め、車いすでの自立や社会復帰を目指すことが優先されている。

 その常識を覆す可能性があるのは再生医療だ。札幌医大は神経の機能を回復させるため、患者本人の幹細胞を培養し、医薬品として実用化を目指している。慶応大もiPS細胞を使った臨床研究を計画するなど、従来は不可能と考えられてきた神経系再生への期待が高まっている。

島田洋一教授
   島田洋一教授

 



 だが「神経細胞の回復が実現しても、運動機能が回復するかどうかは別だ」と日本脊髄障害医学会理事長の島田洋一・秋田大教授は指摘する。「神経細胞を通して脳からの信号が手や脚にきちんと伝わるようにしないといけない。それには繰り返し体を動かし、神経を正しくつなげる必要がある」

 ▽ロボットで歩行

 神奈川リハビリテーション病院(神奈川県厚木市)は、下半身まひの患者向けの海外製のロボット装具「ReWalk(リウオーク)」を使った方法を研究している。両手でつえを持って体を支えながら体を前に傾けると、両脚に取り付けた装具が左右交互に前に出て歩く仕組みだ。

 研究は、リハビリで安全に使用する条件を探るのが目的。屋内や屋外での使用を重ね、内出血や皮膚のこすれなどがないか細かくチェックし、改善点を見つけていく。

リハビリに取り組む患者
リハビリに取り組む患者

 下半身の完全まひと診断された11人が研究に参加。脚の筋肉にわずかに動きが見られるようになったケースもあるという。担当する横山修(よこやま・おさむ)リハビリテーション科部長は「一部残っていた神経の機能が、運動を繰り返したことで活発になったのかもしれない」と分析。「再生医療の実施後も筋肉が動くようになるには多くの刺激が必要だと思われるが、ロボットを使えば、正しい歩き方を繰り返す訓練量を稼げるのが利点だ」と期待する。

 筑波大病院(茨城県つくば市)は、日本のサイバーダイン社のロボットスーツ「HAL(ハル)」で研究中。患者のまひした下半身にHALを装着してもらい、歩く時に振る腕の動きにHALが反応して両脚を動かす。

 HAL単独での機能回復の可能性を探る一方、再生医療とHALを組み合わせることも将来の有力な選択肢。脚の筋肉が少しでも動くようになれば、次は筋肉の活動をHALが読み取って脚を動かすなど、レベルアップできる可能性があるという。

 ▽専門家集め検討

 現在はこのように、個々の医療機関がそれぞれリハビリ法を模索している段階。日本脊髄障害医学会はこれらをまとめ、まひの程度や年齢などに合わせた標準的なプログラムを作ろうと昨年秋から議論を始めた。

 実績が豊富な医療機関がデータを持ち寄って科学的な検証を進め、約3年後に完成させたいという。再生医療による神経機能の回復の程度に応じ、適切なリハビリをどこでも受けられるような土台作りを目指す。

 島田理事長は「どのような方法でリハビリを行えば良い結果が出るのか、学会として専門家を集め、厳しく判定していきたい」と話している。

(共同通信 岩村賢人)

 

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