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乾癬への理解、患者が訴え WHO文書を翻訳、公開  社会の偏見解消求め

2018.1.30 11:00
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 皮膚が赤く盛り上がり、はがれた皮膚片が白いふけのように落ちる「乾癬(かんせん)」。新薬の導入で症状が治まる患者が増えた一方、その見た目から、うつる病気ではないかなどの誤解が絶えず、患者は孤立感を深める。こうした現状を変えようと、患者会では各国政府に偏見解消の取り組みを求めた世界保健機関(WHO)の勧告文書を自ら翻訳し、社会の理解と政策の充実を訴えている。
 
 
 

 ▽ストレスで悪循環

 この病気に詳しい中川秀己・東京慈恵医大教授(皮膚科)によると、乾癬には皮膚症状のみの尋常性乾癬、関節が腫れたり痛んだりする乾癬性関節炎などがある。患者の8割を占める尋常性乾癬では、免疫細胞が異常に活性化して炎症が起きるほか皮膚の新陳代謝が通常の約10倍に加速する。皮膚がはがれ落ちるのはこのためだ。

 炎症の原因物質の働きを抑える「生物学的製剤」が2010年に初承認されたのを機に、治療を受ける患者が増えたという。同製剤は6種類に増えて選択肢が広がり、症状が出ない「寛解」の状態を保つ人も多い。中川さんは「良くなると分かれば治療にも前向きになれる」と話す。
 
 ただ、治療の進歩の半面、社会の偏見が症状緩和の大きな妨げになる。中川さんは「精神的ストレスがかかると炎症の原因物質が増えて、さらに症状が悪化する。悪循環です」と残念がる。
 
 ▽スティグマ
 
 宮城県の会社員で日本乾癬患者連合会会長の柴崎弘之さん(42)は、今は症状が落ち着いたが、頭や腕の患部が目立っていた。「病気のことが分かってもらえず、患者会に入る前は一人もんもんとしていた」という。
 
中川秀己教授
   中川秀己教授

 はがれ落ちた皮膚片が職場の床に散らばり、不潔に見られているのではないかと感じた。温泉やスポーツジム、理髪店などで人に避けられたり、店側からもう来ないでほしいと言われたりした話もよく聞くという。

 連合会副会長で神奈川乾癬友の会代表の会社員、奥瀬正紀さん(53)が日本代表を務める国際乾癬患者団体連合は、WHOに対応を働きかけた。その結果、WHOは14年「偏見・差別やスティグマ(社会的烙印)と闘うための取り組みを強める」との総会決議を採択。「最も訴えたかったことをくみ取ってくれた」(奥瀬さん)。

 ▽イベント情報発信
 

 WHOは16年、決議と同趣旨の文書「世界乾癬レポート2016」を発表。乾癬を「感染しない慢性の病気で、根治治療法がなく、生活の質に重大な悪影響がある」「関節炎、循環器疾患、うつ病などの合併リスクが高い」と解説。世界で1億人以上の患者がいる深刻な問題と位置付けた。

 その上で、政府と政策立案者に対して、専門的な医療を利用可能にして不要な苦しみを予防し、スティグマや差別を減らすために、病気への認知度を上げるキャンペーンの実施や法整備を勧告した。奥瀬さんはこれを翻訳して厚生労働省にも提出。医師や一般の人向けに連合会のウェブサイトでも公開した。

 会長の柴崎さんは、孤立しがちな患者に、患者会への参加を強く勧める。「この病気は説明が難しいが、患者同士なら言葉がなくても分かり合える。最新の治療の情報も得られる」と話す。

 ただ、17年末に活動中の患者会は20都道府県にとどまり、特に若い患者の参加が少ない。連合会と、奥瀬さんら有志によるプロジェクトチーム「INSPIRE JAPAN WPD」は、それぞれフェイスブックやツイッターなど多様なソーシャルメディアを活用。気軽に立ち寄れるイベント情報などを発信し、参加を呼び掛けている。
 
(共同通信 由藤庸二郎)

 

 

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