隠れた病気にも注意して 高齢者のまぶたの下垂 手術の選択、慎重に

2022年03月15日
共同通信共同通信
 年を取るとまぶたが垂れ下がったり、開きにくくなったりする。それを補うために無意識に眉毛を上げ、あごを突き出すと、こんどは足元が見えず転ぶ原因にもなる。見えにくさや見た目を気にして手術を選択する患者もいるが、専門家は、似た症状でさまざまな病気が隠れている可能性があり、まずは原因をしっかり特定することが大切だと指摘している。
 ▽きちんと診断を
 日本医大非常勤講師の根本裕次医師(眼形成外科)によると、こうした症状は、まぶたを開ける筋肉や神経に原因がある「眼瞼(がんけん)下垂」と、その他の原因による「偽(ぎ)眼瞼下垂」に大別される。眼瞼下垂の主な原因は「生まれつき」「コンタクトレンズの長期使用」「眼の手術」「加齢」などだ。
 
 

 

 ただ、数は少ないが脳動脈瘤(りゅう)、脳梗塞や脳出血、筋無力症、顔面神経の病気、腫瘍などでも同様の症状が現れる可能性があり、よくある眼瞼下垂と間違えると一大事だ。
 まぶたが垂れる病気を診断するのには、いくつかのプロセスがある。まず重要なのは「左右が対称かどうか」だと根本さんは強調した。
 「最初にまっすぐ前を見てもらい、左右差がないかを確かめる。さらに眼球の動き、まぶたの動き、瞳孔の大きさにも左右に違いが無いかどうか確かめる」。差があればその原因をさらに調べる必要があるという。
 ▽手順踏んで鑑別
 偽眼瞼下垂では眼球の位置、まぶたの皮膚の垂れ下がりで瞳孔が隠れていないか、眉毛の下がり具合などを調べる。
 まぶたの冷却や採血、磁気共鳴画像装置(MRI)撮影などの検査も必要になることがあり、患者の立場からは診察が長い、検査が多いと感じそうだ。だが、根本さんは「よくある眼瞼下垂だと短絡せず、そうした鑑別の手順をきちんと踏むのが大切です」と話した。
 では、高齢者でまぶたに原因がある眼瞼下垂はどのように起きるのだろうか。
 「多くは、まぶたを持ち上げる筋肉『眼瞼挙筋』が弱っているか、挙筋につながる『挙筋腱膜(きょきんけんまく)』が緩んだり薄く伸びたりしている」と愛知医大の柿崎裕彦教授(眼形成・眼窩・涙道外科)は説明する。
 上まぶたは、奥まったところにある眼瞼挙筋が挙筋腱膜を通じてまぶたを覆う瞼板を引き上げ、この動作でまばたきができる。眼瞼挙筋の力が衰えたり、挙筋腱膜が緩んだりすると、まぶたが十分に持ち上げられなくなるというのだ。
 ▽よくある不満
 根本的な治療は外科手術だ。緩んだ挙筋腱膜を折りたたむようにして瞼板につなぎ直す方法が代表的。全体を縮めたのと同じ形になり、力が伝わるようになる。
 また、高齢者ではほかに、額の皮膚がたるんで上まぶたにかぶさってくる場合がある。これはまぶた自体の問題ではない偽眼瞼下垂だが、この症状も皮膚を切り縮める手術の対象になり得る。まぶたと同時に、あるいは単独で手術する場合があるという。
 ただ、外科手術には特有の難しさもある。
 「手術跡はどうしても一時的に硬くなり、手術後しばらく見えにくさを感じるケースがある。また涙の流れ方に影響して、目が乾きやすくなることも」と柿崎さん。
 患者にとっては、手術後の外見(整容性)の問題も見逃せない。手術後に「思っていたようなまぶたの形になっていない」「左右差が大きい」などの不満が生じることがよくあるという。
 柿崎さんは「手術によって、自分の暮らしで必要な“見え方”が得られるかどうか、手術後のリスクとの兼ね合いで考えるべきで、慎重に検討してほしい」と話した。(共同=由藤庸二郎)