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透析患者、腎臓がんに注意 10年以上で高いリスク 定期検査で早期発見を

2022.3.8 0:00
 腎不全患者への人工透析の症例数は増え続け、患者の透析期間はより長くなった。半面、患者の高齢化や透析期間の長期化によって腎臓の傷みが進み、腎臓がんのリスクが高まることが判明。長期透析患者のがんの早期発見が課題となっている。専門家は、少なくとも年に1回は詳しい検査を受けるよう強く勧めている。
 ▽10倍程度
 腎臓がんに詳しい近藤恒徳東京女子医大足立医療センター教授によると透析患者の発がんについては国内外の研究があり、いずれの報告でも発がんリスクが一般人より高い。肝臓、肺、乳がんも増えるが、顕著なのが腎臓がんだ。研究報告で若干のばらつきはあるものの、おおむね一般人の10倍程度だった。
 透析患者で腎臓がんのリスクが高まる詳しいメカニズムは分かっていないが、腎臓の構造が変わることが影響するとの見方が有力だという。
 人工透析が必要なのは、血液から老廃物と水分を取り除いて尿として排出する腎臓の機能が悪化した腎不全の状態だ。近藤さんによると、こうした腎臓では、のう胞と呼ばれる袋のような構造が徐々に増え、腎不全が長期にわたると多発したのう胞が腎臓全体に及ぶ。
 ▽のう胞の壁
 「透析患者の腎臓がんはそののう胞の壁にできることが多い。たまった水に含まれる、老廃物である尿毒性の物質が関与すると考えられている」と近藤さんは話す。
 実際、透析患者の手術で摘出した腎臓からは化学物質や炎症物質など多様な尿毒性物質が見つかっている。腎臓の細胞は透析期間が長いほど尿毒性物質にさらされ、がん化のリスクが高まる。
 
 

 

 透析が長くなると、進行がんの割合が増えることも懸念材料だ。
 女子医大のデータでは、透析10年未満ではステージ3以上の進行がんは8%弱だが、10年以上20年未満では1割超、20年以上では2割近くだった。20年以上ではがんの悪性度が高いことも分かった。早期発見の重要性を示す結果だ。
 ▽無症状のうちに
 透析患者でも、治療方針は一般の腎臓がんと変わらない。手術は腎臓全体を摘出するか、部分的に切除するか。手術方法では開腹手術か、腹腔(ふくくう)鏡による手術かのどちらかが選ばれる。
 抗がん剤による治療は、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬が主流になってきた。種類が多く、薬剤の組み合わせで効果が認められる。ただ、透析患者には身体的な合併症が多く、副作用の問題で抗がん剤治療が難しいことが知られている。早期発見はこの点でもメリットが大きい。
 では、早く見つけるにはどうしたらいいのか。
 近藤さんによると、血尿、腰や背中の痛み、転移先のがんの発見、腹部のしこり、発熱、体重減などの症状をきっかけに見つかる場合もあるものの、症例の7割は無症状だった。
造影剤を使ったコンピューター断層撮影(CT)で腎臓がんが見つかった事例。通常のCT(上)では写らない2カ所のがんが白く見える(矢印)(東京女子医大提供)
造影剤を使ったコンピューター断層撮影(CT)で腎臓がんが見つかった事例。通常のCT(上)では写らない2カ所のがんが白く見える(矢印)(東京女子医大提供)

 

 「少なくとも年1回は検査を受けてほしい。無症状のうちに見つかれば、早期がんの割合が高く、再発が少なく、生存率も高い」という。
 検査には超音波、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)などがあるが、近藤さんは造影剤を使ったCT検査を勧める。
 「超音波検査ではがんと血液の塊との区別が難しく、患者の体形や検査者の技量にも左右される。造影剤を使うと、血流の盛んながん組織は白く写り、見つけやすい」と話す。造影剤にアレルギーがある人には使えないが、女子医大のデータでは造影CTががんを見つける感度が92%と最も好成績だった。(共同=由藤庸二郎)

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