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脳と心臓の梗塞リスク判明 生活習慣病の合併症 全国網羅のデータ分析

2021.7.20 0:00
 日本人はどんな治療をどのぐらい受けているのだろうか。実は網羅的なデータはほとんどない。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、糖尿病など生活習慣病に使われた薬剤や、施された治療について集約、分析したリポートを公表した。結果からは、糖尿病があると脳梗塞や心筋梗塞のリスクが極めて高いことが判明。早期受診と合併症予防の重要性が改めて明らかになった。

 
 

 ▽若いほど影響大

 分析には医療費支払いに際して医療機関が健康保険組合に提出する診療報酬明細書「レセプト」のデータベース「NDB」を活用した。労災保険や生活保護などごく少数を除き、全国ほぼ全ての医療費データを網羅。毎年約18億件の匿名化されたデータが集まる。ここから糖尿病治療の動向と、治療中に合併症をどれだけ検査、治療したかに焦点を当て、2010年と16年のデータを調べた。
 明確に示されたのは、糖尿病治療中の脳梗塞と心筋梗塞の高リスクだ。
 16年に糖尿病薬の処方と脳梗塞後のリハビリテーションをともに受けていた人は40~64歳の年代で約1万6千人、65~74歳で約1万8千人、75~84歳で約2万人だった。
 各年代で糖尿病でない人の脳梗塞リスクと比べると、40~64歳で約12倍、65~74歳で約7倍、75~84歳で約4倍となり、若いほどリスク比が高かった。心筋梗塞も同様で、40~64歳で約14倍、65~74歳で約7倍、75~84歳では約5倍になった。
 研究チームは、若いほどリスク比が大きく出たのは、脳梗塞や心筋梗塞の原因が高齢者では糖尿病以外にも多様な半面、若い人では糖尿病の影響が占める割合が相対的に高いからとみている。
 ▽網膜症が急増?
 糖尿病に特有の合併症はどうだろう。腎不全から人工透析になる原因の1位は糖尿病だが、糖尿病治療と人工透析をともに受けた人は10年の約1万9千人から16年は約1万1千人に急減。国の重症化予防施策の効果が表れていた形だ。
 目の合併症でいまだに失明の原因になる糖尿病性網膜症は逆に約1600人から約8200人へ急増。ただ、実際の患者が増えたのか、早期治療する人が増えたのかが不明だという。
 意外なことに、糖尿病治療を受けた総数は10年の194万人から154万人に大幅に減った。「糖尿病疑い」「予備軍」が各1千万人と言われ、高齢化により発症も増えるはずなのに不可解だ。
 ただ、年代別で全ての年代でその傾向が見られ、男女別で比べても、男性は10万人当たり約1600人から約1300人に、女性は同約1400人から約1200人に、それぞれ減少している。
 この研究では、患者自体が減ったのか、受診が減ったのかは明らかではないが、糖尿病は無症状だと受診しない人が多いことが知られている。
 ▽はしご受診の勧め
関東労災病院の浜野久美子糖尿病・内分泌内科部長(本人提供)
関東労災病院の浜野久美子糖尿病・内分泌内科部長(本人提供)

 専門家はどう見るか。関東労災病院糖尿病・内分泌内科の浜野久美子部長は「網膜症の患者が増えたのは早期治療が増えたからだと考えるが、糖尿病患者が減った実感はない」と首をかしげる。「今後、継続的で詳細な解明を待ちたい」という。

 合併症予防について浜野さんは「血糖異常を指摘された、特に働き盛りの受診遅れが問題」という。「糖尿病の受診はもちろん、眼科や歯科、整形外科にも“はしご”して早期発見、治療につなげて」と呼び掛けた。治療の進み具合を医師と共有する「糖尿病連携手帳」も有効だという。
 浜野さんが今、懸念するのは新型コロナウイルス感染症の影響だ。「感染への恐れや経済的な困窮で受診をためらう人が増えた。糖尿病治療は大きく進歩したのに、今後10年単位で悪影響が出ないか、注視するべきだ」と話している。(共同=由藤庸二郎)

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