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進化するレーザー治療 肥大前立腺を“蒸発” 高齢者も体の負担少なく

2021.1.26 0:00

 多くの中高年男性を悩ませるのが「前立腺肥大症」だ。ぼうこうの下にある前立腺が年齢とともに大きくなり、尿道を圧迫してさまざまな排尿障害を引き起こす。以前は前立腺を電気メスで切除する手術が主流だったが、薬物療法など治療の選択肢が広がった。中でも進化が目覚ましいのが強力なレーザーで肥大した前立腺の組織を“蒸発”させる手法だ。体を切らないため高齢者にも負担が少なく、入院期間が短い。治療の新たな切り札として期待されている。
 ▽尿のトラブル
 前立腺は精液を作る男性特有の器官。クルミほどの大きさで尿道の周囲に位置する。年を取ると組織が肥大し、時にミカンほどの大きさになって尿の通り道をふさぐ。夜中に何度も起きてトイレに行く。おしっこが出にくく残尿感がある。思わぬ尿漏れなどのトラブルが起きる。ぼうこう炎の原因になることもある。
 厚生労働省の患者調査によると、1990年に17万2千人だった患者数は2017年に47万3千人に増えた。高齢者の多くで前立腺が肥大し、3割に症状が出る。高齢化社会の生活の質を低下させる大きな要因だ。
 肥大が少ないうちは薬物療法が有効。前立腺を一時的に縮小させたり、筋肉を緩めたりして尿を出やすくする。ただ症状を抑えるには薬を一生飲み続ける必要がある。さらに肥大すると手術が避けられない。
 ▽医師の技量
 「こうした手術が必要になる患者は国内で年間3万人近くいる」と話すのは福岡市にある原三信病院の山口秋人顧問。山口さんはこれまで数千例以上の前立腺手術を手がけてきた。

前立腺肥大症のレーザー治療に使うPVPの装置と原三信病院の山口秋人顧問=福岡市
前立腺肥大症のレーザー治療に使うPVPの装置と原三信病院の山口秋人顧問=福岡市

 

 標準的なのが尿道から内視鏡を入れ、肥大した前立腺を電気メスで切り取る手法。代わりにレーザーメスを使うHoLEPという手法もある。前立腺をほとんど除去するため再発せず治療効果が高いが、切り取った組織をぼうこう内で刻んで管で吸い出す“後処理”が必要になる。
 山口さんは「HoLEPは手順が複雑で医師の高い技量が求められる。人によっては出血など合併症の懸念もある」と指摘。代わりに力を入れるのが「光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)」という新たな治療法の普及だ。
 同病院では06年にPVPを導入。山口さんは全国の医療機関と治療の向上を目指す「PVP研究会」の代表を務める。「患者の体に負担が少なくどんな医師でも平均的で安定した治療ができるのが利点だ」と語る。
 ▽短期入院
 PVPは赤血球中のヘモグロビンと反応する緑色のレーザーを使う。前立腺を切り取るのではなく、照射して体の組織を瞬時に蒸発させるのが従来手法との違いだ。
 麻酔をかけて尿道から光ファイバーを入れ、肥大した前立腺に内側から照射する。傷口の表面には薄い凝固層ができて出血を防ぐ。これを繰り返して尿の通り道を確保する。手術は1時間ほどで終わる。

 
 

 

 直後はカテーテルを入れるが多くの場合は翌日に抜ける。順調なら入院期間は4日ほど。1週間近い入院が必要な従来手法より短い。11年に保険適用されて患者の経済負担が減った。装置を開発した米医療機器メーカーによると、国内で90近い医療機関が装置を導入し、年間数千例が実施されている。
 課題は装置が高額な点。消耗品の光ファイバーに加えて病院の初期投資に数千万円かかる。最近は初期投資が少ない別タイプのレーザー治療も登場した。山口さんは「患者の利益のためにもメーカーは装置の低価格化を進めてほしい」と訴える。(共同=吉村敬介)

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