×
メニュー 閉じる メニュー

コロナの睡眠影響を調査 英国に比べ日本は小さめ  医療従事者に懸念も

2022.3.18 0:00
 不安やストレスは日々の眠りに影響を及ぼす。新型コロナウイルスの流行が睡眠に与える影響を国際研究チームが調査すると、国によって大きな差があることが分かった。度重なるロックダウン(都市封鎖)を経験し多くの死者が出た英国に比べると、日本の影響は今のところ小さめと言えそうだ。チームに参加した国立精神・神経医療研究センター病院の松井健太郎・睡眠障害検査室医長は「強いストレスにさらされ続けている医療従事者などの長期的な影響を調べる必要がある」と話す。
 ▽13カ国
 調査はフィンランドの研究者が呼び掛けた「国際COVID―19睡眠研究(ICOSS)」。一般の人を対象にコロナ流行の前後で睡眠障害が疑われる症状の変化を調べた。同じ質問様式で国際比較も行った。
 
 

 

 ネットなどを通じて「寝付きにくい」「夜中に目覚める」「日中の疲労感がある」「日中に眠ってしまう」などの項目に該当する度合いを答えてもらう。「どの程度よく眠れているか」も尋ねて睡眠の状態を評価した。
 コロナ流行が本格化した2020年5~8月に日本や英国、米国、フランスやイタリア、スウェーデン、中国、ブラジルなど13カ国でアンケートを実施。計2万5千人超の回答を得た。
 ▽隔離と経済的苦境
 データを分析すると、世界全体では睡眠や日中の問題がコロナ流行後に10~20%の人で悪化していた。コロナ前に比べて眠れなくなった人がいる一方で、よく眠れるようになったと感じる人が一定数いたことも分かった。テレワーク導入で通勤が不要になり、睡眠時間が延びたのが理由の一つと考えられる。
 日本では、コロナ後に睡眠障害が疑われる症状を訴えた人は2割ほどにとどまった。コロナ前からの悪化の度合いは比較的緩やかだ。一方で英国では「睡眠の質が悪い」と感じる人が5割を超え、悪化の度合いも大きかった。フランスやブラジルなども影響の大きさがうかがえる。
 睡眠の質を損ねる要因として浮かび上がったのが隔離生活と経済的な苦境だ。単なる自粛でなく、強制的なロックダウンが続くとストレスが高まって不眠を招く。職を失って生活を維持するのが難しくなり、悪夢や日中の疲労などに見舞われる人も増えたとみられる。またコロナに感染した人は睡眠全般に悪影響を受けることも分かった。
新型コロナの睡眠影響に関する国際研究チームに参加した国立精神・神経医療研究センター病院の松井健太郎医長
新型コロナの睡眠影響に関する国際研究チームに参加した国立精神・神経医療研究センター病院の松井健太郎医長

 

 ▽気晴らしを
 日本の影響が小さいのはなぜか。
 松井さんは「英国などと比べると死者が少なく、一般の人が死を身近に感じる度合いが少なかったからではないか」と指摘。「日本はマスク着用など国民の努力のおかげでロックダウンを回避できたのも大きい」と分析する。
 ただ心配な点もある。最前線に立つ医療従事者の心の健康だ。松井さんが20年10月に医療関係者640人を調査すると、49%にコロナ前に比べて身体的な負荷の増加が、78%に精神的な負荷の増加がみられた。コロナ感染への恐怖や対人交流の減少が、不安やうつ症状と関係している可能性がある。
 心の健康を損ねると睡眠障害に陥ってさらに症状が悪化しかねない。一般の人も生活の変化が不眠の引き金になることがあるので注意が必要だ。
 「コロナ流行が落ち着いて再び通勤するようになると、人間関係のストレスや睡眠時間の減少で眠りに影響が出るかもしれない」と松井さん。「勤労世代の人は睡眠リズムの乱れに気を付けて、睡眠時間は十分に確保しながら上手に気晴らしをしてほしい」と話す。(共同=吉村敬介)

最新記事