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小児のコロナ炎症は少数 川崎病とは異なる病気 治療の手掛かり探る

2021.3.30 0:00

 子どもは大人と比べて新型コロナウイルス感染で重症化しにくいが、時に「小児多系統炎症性症候群(MIS―C)」と呼ばれる全身性の炎症が起きる例が海外で報告されている。当初は川崎病と似た側面が注目されたが、発症年齢や症状などに違いも多く、どうやら異なる病気のようだ。国内でも最近になって、少数だがMIS―Cとみられる症例が見つかり始めた。専門家は「過度な心配は不要だが、子どもの新型コロナ感染に引き続き注意してほしい」と呼び掛けている。

 
 

 ▽治療で回復
 日本小児科学会と日本川崎病学会は2月、新型コロナ感染後に重症化した少数の子どものうち、MIS―Cと考えられる患者が複数いることを明らかにした。国内ではこれまで患者がほとんど見つかっていなかったが、最近になって感染者が大きく増えたことが背景にありそうだ。学会によると、いずれも治療を受けて回復している。年齢や症状などは明らかにしていない。
 海外で多く報告されたMIS―Cは当初、川崎病と似た症状が注目された。いずれも発熱や全身の血管の炎症を伴い、重症化すると心臓の機能が低下することがある。
 だがよく調べると相違点が多いことも分かってきた。川崎病の発症年齢は4歳未満が7割を占めるが、MIS―Cは年齢層の中心が8~9歳と少し高い。

 
 

 ▽体質
 またMIS―Cは腹痛や下痢、嘔吐(おうと)といった腹部症状を伴うことが多いが、川崎病ではそうした症状はあまり多くみられない。血圧低下が起きるケースが多いのもMIS―Cの特徴だ。
 個人の体質が両者の違いに関係している可能性もある。MIS―Cはアフリカ系やヒスパニック系の人に多いが、川崎病は日本や韓国、中国といった東アジア系に多いことが分かっている。日本川崎病学会学術委員長の尾内善広千葉大教授は「遺伝子の違いが背景にあるのかもしれない」とみている。
 いずれも発症メカニズムには謎が多い。体質の違いが下地になり、ウイルスや細菌の感染をきっかけに免疫機能が影響を受けて発症する可能性が指摘されている。MIS―Cが新型コロナ感染が引き金になるのは間違いなさそうだが、川崎病を起こす病原体は特定できていない。
 ▽昨年の半数
 日本川崎病学会は昨年末、新型コロナ流行が始まった2020年1月から10月までの川崎病の入院患者数を、19年と比較する調査を実施した。
 川崎病は通常、冬と夏に患者数のピークがあるが、20年は夏のピークがみられず、秋にかけて19年の半数ほどで推移していた。マスク着用などによってインフルエンザなど一般的な感染症が減ったのが関係している可能性がある。
 一方、新型コロナ検査で陽性だった川崎病患者の比率は、他の病気の患者とほとんど変わらなかった。尾内さんは「新型コロナによって川崎病が増えるのではないかとの懸念があったが実際は減っていた」と話す。
 国内では毎年1万5千人以上の子どもが新たに川崎病を発症し、重症化して回復せずに数人が命を落とす。尾内さんは「MIS―Cとの違いを遺伝子レベルで調べることで効果的な川崎病の治療法の手掛かりが見つかるかもしれない」とみる。
 川崎病を世界で初めて報告した小児科医の川崎富作さんは、新型コロナ流行が続く昨年6月に老衰で死去した。尾内さんは「MIS―Cは川崎病に新たな視点をもたらす可能性があり、何か運命的なものを感じる。川崎さんの遺志に報いたい」と語る。(共同=吉村敬介)

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