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「標準治療」こそ最先端 よくあるがんの勘違い 緩和は治療の最初から

2021.2.3 0:00
 がんについて学ぶのはほとんどが自身や身内ががんになった後だ。体や心の不調があれば情報はなかなか頭に入らないが、基礎知識を得られないと最適な治療を選べなかったり、治療が遅れたりしかねない。がんの電話相談に当たる担当者が挙げる「よくある勘違い」について、専門家に解説してもらった。
 ▽チャンピオン
 がん情報サイト「オンコロ」は、がんの最新研究や新薬、治療法の情報をウェブサイトで提供し、電話相談に応じている。3年以上、電話を受けてきた中山裕樹さんによると、最も多い勘違いは学会の診療ガイドラインなどが推奨する「標準治療」のことだという。
勝俣範之日本医大教授(同大提供)
勝俣範之日本医大教授(同大提供)

 「標準ではなくて最新、最先端の治療はないかとよく聞かれる。標準が“並”“普通”と誤解されている」と中山さんは言う。日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授は、「それは大きな誤解。標準治療こそが最先端だ」と力説する。

 「薬の開発は、実験室で新しい物質を候補とし、動物実験と人での治験を経てふるい落とされる。米国会計検査院の報告では、最終的に新薬と認められるのは1万分の1程度。標準治療に選ばれるのはさらに難しい」
 勝俣さんは標準治療を「厳しいトーナメントを勝ち抜いたチャンピオン」に例える。新薬とどちらが効果が高いか、常に挑戦が繰り返され、勝ち残ったものが残っている。それが標準治療だ。薬の量や組み合わせ、いつ投与するかも、最新の研究で刻々改められる。
 一方で「根拠の不確かな治療を勧めるウェブサイトには『痛くない、つらくない治療を受けたい』という患者の気持ちにつけ込む表現が多く、患者を惑わせる」と中山さんは嘆く。治験をしようとせず、保険が利かない高額の自由診療も多い。
 
 

 中山さんは根拠の不確かな治療に関心を示す相談者には「標準治療なら効果や副作用、つらさを緩和する方法、やめるタイミングも分かっている」と話し、公的機関などの確かな情報を参照するように勧めている。

 ▽生活の質を保つ
 中山さんによると「緩和治療」にも勘違いが多いという。「緩和治療を勧められたら終末期なのか」という相談だ。
 勝俣さんは「治療できなくなったから緩和、ではない。今は治療開始と同時に緩和が必要だとする考え方が主流。痛みやつらさを和らげて療養生活の質を保つことが重視される」と解説する。早くから緩和ケアに取り組むと、患者の生存率が高まるとの研究報告もある。
 患者の多くは、治療のほかに自分で何かできないか、探そうとする、勝俣さんは、手術や抗がん剤に耐えるので十分だとして、生活をできるだけ楽しむよう勧めている。
 ▽治験は高くない
 中山さんによると、ほかにも「薬の治験はお金がかかるのでは」「がんになったのは生活習慣が悪かったためか」「仕事を辞めなければいけないか」などの相談も多い。勝俣さんによると、いずれも正しくない。
 安全性や効果を確かめる治験では、多くの患者に参加してもらうためむしろ安く、交通費など協力費が支給されることも。
 がんになった原因についても「生活習慣に起因するとみられるのは30~40%。遺伝的素因によるものが5~10%、残り約6割は原因がはっきりせず、健康に気遣って人間ドックを定期的に受けていたとしてもがんになるときはなる」と話す。
 仕事を慌てて辞めるのも早計。抗がん剤治療や放射線治療は通院でも可能になってきた。仕事との両立支援の制度も整いつつあり、がん相談窓口を通じてソーシャルワーカーや社会保険労務士から適切な助言が受けられるという。(共同=由藤庸二郎)

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