コロナで移植数が減少 世界16%、日本は67% 国際チームの20年調査

▽22カ国
チームは欧州や北米、南米、アジアなどの22カ国の臓器移植データを集めてコロナ流行の影響を分析した。医療体制が整った国が多く、22カ国で世界全体の移植実施数の6割以上を占める。
チームは20年にそれぞれの国で累計100例目の感染が報告された日(2月下旬から3月下旬)に本格的な流行が始まったと仮定。同年12月末までの移植実施数を19年の同じ期間と比較した。
分析の対象としたのは心臓、肺、肝臓、腎臓の4臓器。心肺同時移植など複数の臓器を同じ患者に移植した場合は別々にカウントした。
すると4臓器を合わせた全体では、19年に7万件余りだった同期間の移植実施数は20年に約6万件弱と1万件以上減少していた。減少率は15・92%。臓器別では腎臓19・14%、肝臓10・57%、肺15・51%、心臓5・44%の減少となった。
▽慎重姿勢
日本の同期間の移植実施数は、4臓器を合わせて19年の2100件超から20年の700件余りに大幅減少した。減少率は66・71%と著しい。
大きな流行の波に見舞われた英国やフランスの減少率は30%前後だったが、同様に大きな流行が起きた米国は4%強、ドイツは10%強にとどまる。同じ先進国でも日本の影響が特に大きい。
「日本はもともと脳死からの臓器提供が少なく、米国などに比べると生

体腎移植が占める割合が大きい」と田辺さん。生体移植では臓器提供者が感染するリスクも考えられる。「日本では患者側に加え、医療を提供する側が移植実施に慎重になったのが背景にある」と指摘する。
日本移植学会はコロナ流行の当初「最終判断は移植施設と移植医に責任がある」としながらも、実施に慎重な対応を求める指針を出した。ウイルスの特徴や患者のリスクなどに不明な点が多かったためだ。学会はその後、臓器提供の意思を生かし、腎不全患者を救うために生体腎移植の再開を提言する姿勢に転じた。
▽高リスク
国内で透析を受ける腎不全患者は約34万人。日本臓器移植ネットワークには腎移植を希望する1万3千人以上が登録している。田辺さんは「腎移植がストップすると待機患者が透析を受け続けることになる。重症化リスクが高い腎不全の人が透析センターでコロナに感染する事態もありうる」と話す。
東京女子医大病院では多くのコロナ中等症や重症患者を引き受けながら、一般医療の提供態勢を極力維持するように努めた。全ての入院患者をPCR検査し、コロナ患者と一般の患者を診療する病棟や集中治療室を分けて院内感染のリスクを減らした。おかげでこれまで大きなクラスター発生を防ぐことができた。
20年は一時減少したものの134件の腎移植を実施し、前年を上回る水準を維持した。「日本は災害や有事に備えた危機管理態勢の整備が不十分だ」と田辺さん。「日常的に感染症がまん延する世界に備え、患者のための医療を維持できる病院の形を実現したい」と話す。(共同=吉村敬介)