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検疫機能、一元化が必要 コロナ、水際対策に限界 浜田東京医大教授に聞く

2021.5.4 0:00
 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)は、人々のグローバルな移動によって新興感染症が瞬く間に広がる危険性を見せつけた。流入、拡大を止めるには現行の検疫体制をどう改めればいいのか。検疫体制に詳しい浜田篤郎東京医科大教授(渡航医学)に聞いた。
検疫機能強化の必要性を訴える浜田篤郎東京医科大教授
検疫機能強化の必要性を訴える浜田篤郎東京医科大教授

 

 ▽新興感染症

 新型コロナの拡大防止では、横浜港のクルーズ船入港以来、水際対策の重要性が叫ばれた。ただ、浜田さんは「水際対策で防ぐのには限界がある」と指摘する。
 そもそも「検疫」は、入港した船内で病気の人を見つけて入域を防ぐことが主眼だったからだ。
 「船の長旅では、感染者は航海中に症状が現れる。そうした発症者を寄港時に上陸させない必要があった。しかし戦後、航空輸送時代が到来すると、乗客が短時間で大量に到着する空港検疫は、発熱や下痢など顕著な症状がある人をチェックする機械的なものになっていった」という。
 1970年代以降、コレラやペストなど既存の感染症の世界的流行が減り、日本国内でも感染症に関する研究の予算が細り、人材が育っていなかったという。
 2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的流行が起きて、これが様変わりする。
 05年、世界保健機関(WHO)は感染症の国際的流行を最大限防止するための国際保健規則(IHR)を大幅に改定した。従来、黄熱・コレラ・ペストの三つだった対象疾患をSARSなどの新興、再興感染症を想定して拡大し、速やかな報告と情報共有などWHOと各国との協力強化を求める内容だ。
 ▽08年の提言
 浜田さんは「新興、再興の感染症、特に新興のウイルス感染症が増えて、従来の検疫は無力化していた。各国が見直しを迫られた」と指摘する。
 IHRの改定を受け、厚生労働省は07年、特別研究事業として「新たな検疫のあり方に関する研究」の研究班(主任研究者・倉田毅国立感染症研究所名誉所員)を設け、浜田さんも参加した。
 
 

 


 研究班は08年公表の研究報告書で国内体制の拡充を提言。検疫を危機管理の一環と位置付け、全省庁横断的な「健康危機管理庁(仮称)」を新設すること、さらに①内外の感染症情報の収集分析能力強化②人材の供給、配置のため体制を一元化した「検疫ヘッドクオーター(仮称)」の創設③国の行政、地方の公衆衛生・医療関係機関の連携―の3点を訴えた。
 浜田さんは、これらの機能をそれぞれ集中してこなす独立した部署を設けるべきだと言う。「空港や港に多くの人材を常駐させる必要はない。諸外国のように平時は情報収集と分析に当たる部署に感染症疫学を専門とする十分な人材を配置。発生を覚知した緊急時には、速やかに現場ごとに必要な人材を派遣できる、そうした組織の形が望ましい」
 ▽教訓取り入れを
 中でも「検疫を通り抜けた後、持続的に感染症の発生をキャッチする仕組み」が肝心だという。
 各地の医療機関や保健所、消防などからの患者発生情報を集約するのと同時に、海外で気掛かりな感染症が発生したときに機動的に調査、分析ができる機能が求められるという。
 この報告書が公表された後も、新型インフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS)と、新興感染症が相次いだ。今後も短期間で新たな感染症が生まれる可能性は高い。
 浜田さんは「日本は対策が遅れたが、先に対策を強めていた各国も新型コロナでは感染拡大を防ぎきれていない。そうした国の教訓も取り入れて、より効率的な危機管理を目指すべきだろう」と指摘した。(共同=由藤庸二郎)

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