途上国にもワクチンを 先進国の購入で不足懸念

英国などの国際研究チームは英医学誌ランセットに発表した論文で、先進国と製薬会社の間でワクチン購入の直接契約が進むことなどによって、途上国への供給が滞る事態に警鐘を鳴らした。チームは「このままでは死者を減らして世界経済を回復させるチャンスが失われる」と指摘する。
チームは、各国で開発が進むワクチンの2021年の供給可能量や接種1回当たりの価格、高所得国による購入契約などの公表データを2月初旬時点で分析。有効性が高く承認済みのものを含む5種類のワクチンについて、供給可能量の少なくとも70%を世界人口の16%にすぎない高所得国が買い占めている実態を明らかにした。低所得国の多くは、世界保健機関(WHO)などが進める国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じたワクチン配分に頼らざるを得ない。COVAXは資金不足が指摘され、最近になって先進7カ国(G7)が拠出増を表明した。
ワクチン接種をためらう人が先進国だけでなく途上国にいるのも懸念材料。昨年10~12月に32カ国で実施したアンケートでは、ベトナムやインドなどで9割の人が接種に前向きだったが、東欧や南米、中東などで「接種しない」と答えた人が半数近くを占める国があった。日本は7割弱が接種に前向きだった。