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避難をためらわないで 大震災教訓に感染制御 3密避け手洗い、清掃を

2020.9.4 18:02
 新型コロナウイルス感染症の流行で、災害時の避難所での集団感染が懸念されている。ただ、避難所でインフルエンザやノロウイルスの集団感染があった東日本大震災の際にも、きちんと感染制御をすれば拡大を抑えられた。専門家は、十分な準備を急ぎつつ、準備が間に合わなくても災害発生時には避難と避難者受け入れをためらうべきではないと強調している。
東日本大震災の被災者で混雑する中学校の避難所=2011年3月、岩手県陸前高田市
東日本大震災の被災者で混雑する中学校の避難所=2011年3月、岩手県陸前高田市

 

 ▽柔軟な対応を
 避難所の問題では4月、内閣府や厚生労働省などから通知が出された。要点は(1)可能な限り多くの避難所開設(2)ホテルや旅館の活用、親戚や友人宅への避難も検討(3)手洗いなど基本的対策(4)十分な換気、スペースの確保―などだ。ただ具体策は個々の災害現場、避難所の事情で大きく違ってくる。
 桜井滋岩手医大教授(感染制御学)は「首都圏などでは多数の避難所確保も可能だろうが、どこでもできるとは限らず、柔軟な対応が求められる」と指摘する。
 避難勧告レベルに応じて避難先を変える考えは一見合理的だが、勧告のタイミングを早め、指示内容を十分に伝えることで“結果として”在宅避難や分散避難になるのが現実的。住民に選択の余地がないのに、避難先を求めてさまようことがあってはならない。
 桜井さんは「私見」と断りつつ、感染の有無で避難者を拒否するのは明らかに誤りだと話す。「無症状者にも、避難所運営者にも、感染者が潜む可能性はある。それを忘れてはならない」
 ▽教訓は生きている
 避難所では半ば強制的に集団が形成され、感染リスクはいわば宿命的だ。災害が起きる前に準備するのが理想だが、それ以前でも、可能な限りの感染対策を積み重ね、相対的にリスクを下げる努力が求められるという。
桜井滋岩手大教授
桜井滋岩手大教授

 


 桜井さんは東日本大震災の後、日本環境感染学会の検討委員長として、被災地での「感染制御マネージメントの手引き」を取りまとめた。手引きは、感染管理の注意点として「手指の清潔」「居住空間の清掃」「洗濯」「廃棄物の処理」を挙げた。「コロナ以後も変わらない。中でも手指の清潔は基本中の基本」と桜井さん。大震災の教訓は今も有効だ。
 本来は居住を想定していない公民館や体育館などの避難所では「食事と洗濯を外注」「トイレごとにスタッフ配置」「寝床の間隔を1メートル以上、できれば仕切る」などを推奨する。仕切りはカーテンなどでは清掃が難しく、表面が拭き取れる素材が適切。周囲の人が体調不良に気付く「見守り機能」を損なわないよう、個室化させないのがいい。密閉すれば換気不良や熱中症も起きやすい。
 避難所開設後は、こうした対策になお改善すべき点はないか、できるだけ早く感染制御チームの派遣を要請し、チェックするべきだとした。
 ▽孤立の危うさ
 桜井さんは、コロナ以後の避難の在り方としてよくいわれる「車中泊」「自宅待機」に危うさを感じている。「絶対に駄目とまでは言えないが、感染リスクを下げるために、新たなリスクを増やす手段は取るべきではない。災害関連死が増える恐れも考えられる」
 例えば車中泊では、桜井さんは個人的な経験として車ごと被災したケースを知っている。車で避難すること自体の危険性や、狭い車内で体を動かさないことによるエコノミークラス症候群の恐れも指摘されている。
 また、自宅待機では、誰がどこにいるのか、避難者の把握が難しくなり、被災者が孤立しかねない。「そもそも、自宅や車が安全な場所であること、そこが安全であり続けることを、誰が管理できるだろうか」と疑問を呈している。(共同=由藤庸二郎)

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