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名前に写真、つらかった 三重県の少年事件で娘を亡くした寺輪悟さん 【実名報道 遺族は思う】(2)

2020.3.17 7:30 共同通信

 36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件では、多くの遺族が実名を公表しないよう求め、被害者の氏名を報じる必要性やマスコミの取材の在り方が問われた。同じように事件や事故で突然家族を失った人たちは、どのように考えるのか。それぞれの体験を踏まえ報道への思いを聞いた。(第2回聞き手、共同通信=今村未生)

博美さんの写真に手を合わせる寺輪悟さん
博美さんの写真に手を合わせる寺輪悟さん

 

 15歳だった娘の博美は2013年8月、行方不明になって4日後に、三重県朝日町で遺体となって見つかりました。全てが初めてのことで、何をどうしていいか分からない中、マスコミの取材を含め、追い打ちを掛けるように厳しい現実が次々と押し寄せました。

 事件として捜査を進めていた県警に「本人の名前を出していいか」と聞かれ、「嫌だ。必要ないじゃないか」と押し問答になりました。博美の名誉を守りたい一心でした。インターネットに名前が出ていると言われ「選ぶも選ばないもない。もう公表するしかないじゃないか」と答えました。承諾せざるを得ませんでした。

 遺体があった警察署に寄った後、家に帰ると、県外ナンバーのタクシーが貸し切りでずらっと並び、マスコミが近所の住人に「どんな子でしたか?」と聞き込みをしていました。車を降りた時のフラッシュがものすごくて、妻が怖がりました。

 連日、ニュースで名前と写真がたくさん出ました。つらかった。しばらく犯人が捕まらなかったので、報道が博美に集中しました。週刊誌に書かれたり、「プリクラ」が出たり。「誰が流したんだ」「なんだこれは」と憤りもありました。亡くなった人をさらして、遺族の心情を酌んでくれていないと思いました。

 逮捕されたのは当時高校3年の少年だったから名前は伏せられました。どちらも未成年なのに。名前を出すのは加害者でないとおかしい。1回の過ちと言うけれど、その過ちが大きかったらそれで終わりではないのか、と思います。死んだ人には人権がなくて、少年の人権が考慮されるのは納得がいきません。

 博美の名前はネット上にずっと残り、いつまでも消えない。今でも嫌です。いつまでたっても嫌です。一方で、事件のことは忘れてほしくないとも思います。もう二度と、こういう事件が起きてほしくないから。

 マスコミについては、考え方を変える部分もありました。話していて涙ぐむ記者もいたし、結局は人と人です。津地裁の一審判決が出たとき、記者たちにこう手紙を書きました。「あなたたちの仕事は人を生かすも殺すもできる。活字の力はすごい。それだけは忘れないで」
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 てらわ・さとる 1968年、三重県生まれ。事件後、県犯罪被害者等支援条例の策定に動いた。条例は19年4月に施行された。

 中3女子死亡事件 2013年8月、三重県四日市市の中学3年寺輪博美さん=当時(15)=が、同県朝日町で遺体となって見つかった。死因は窒息死。所持金約6千円が奪われており、県警は強盗殺人容疑などで当時高校3年の元少年(24)を逮捕した。その後、元少年は強制わいせつ致死と窃盗の罪で起訴され、懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定した。

 

・匿名、事実ゆがめる恐れ 桶川ストーカー事件で娘を失った猪野憲一さん【実名報道 遺族は思う】(1)