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子どもを救い家族を支える NICU退室後にも課題 患者会の全国組織が発足

2021.8.10 0:00
 新生児向けの集中治療室(NICU)に入室する子どもは、入院や通院が長期化し、その後も就学、進学、就職などで当事者家族の負担が大きい。そうした子どもたちを救い家族を支えるための団体の初の全国組織「日本NICU家族会機構(JOIN)」が発足した。集中治療が必要な新生児と家族の現状と設立趣旨を関係者に聞いた。
 ▽10人に1人
 新生児に集中治療が必要になる原因は多様だが、最も多いのは低出生体重児だ。
 厚生労働省研究班が2005年に全国126の医療施設を調べた報告によると、同年に生まれた約106万人のうち10人に1人に当たる約10万人が低出生体重児だった。
 報告によると、1500グラム未満で生まれた子どもは全員、1500グラム以上2千グラム未満では51%、2千グラム以上2500グラム未満でも11%がNICUで治療を受け、入室する新生児の約6割が低出生体重児だった。
 2500グラム以上であっても、呼吸障害のある子が入室した新生児の25%。先天性心疾患や先天異常症候群、外科手術を受けた子などもNICUで治療を受けた。
 入室した新生児には人工呼吸や中心静脈栄養、輸液、投薬など、各科のチーム治療が施される。
 同機構代表理事の有光威志慶応大助教(小児科)は「入院期間は長い子で3カ月を超え、退院するまで半年以上掛かるケースもある」と話す。
 
 

 ▽「有用」8割超

 「患者、家族の負担は入院中だけではない」と有光さんは強調する。
 低出生体重児はその後の成長、発達の差がとても大きく、入院や通院を重ねることも多い。就学や進学、就職まで困難な状況が続くことがある。一方、公的支援や社会の理解などはまだまだ改善の余地があるという。
 有光さんは、元日本新生児成育医学会理事長の楠田聡杏林大教授らとこうした状況について話し合い「当事者家族がつながれば、課題を共有し、先輩の助言を受け、行政にも意見が届けられるのではないか」と全国組織の設立を決めた。
 有光さんらは各地の医療機関と患者・家族会に全国ネットワークの必要性について3年をかけて意向確認した。その結果、社会的支援の強化や医療の質の向上に有用だとの回答は8割超。今年6月、一般社団法人として機構が発足した。6月末現在、福島から沖縄まで21の会が参加している。
 ▽思いやりある社会
 NICU経験後に医療が必要な子どもと家族のためのサークル「がんばりっこ仲間」(04年設立)も機構に参加した家族会の一つ。代表を務める東京都の林英美子さんは「全国でつながるメリットは大きい」と話す。
 NICUを退室、退院すると、主治医との関係も薄れ、家族内の問題になってしまいがちだ。その後の医師選びや入園、進学、就職の条件には地域差も大きい。
JOINとEFCNIが作った世界早産児デーの啓発画像(JOIN提供)
JOINとEFCNIが作った世界早産児デーの啓発画像(JOIN提供)

 

 「全国的なネットワークがあれば、互いの事例を紹介し合い、解決策を探ることもできる。また、入院時に困ったことや不安、してほしいことを医療側に伝えていきたい」と期待を込めた。
 有光さんと楠田さんは20年、患者、家族の支援で先行する欧州NICU家族会(EFCNI)の国際委員に選出された。
 EFCNIは既に、意識向上のためのキャンペーンや、政治家らとの対話、当事者の声を医療現場へ反映することなどを通じて制度や医療の質の改善につなげている。
 こうした先行事例を機構ウェブサイトで紹介してきた有光さん。「子どもの命を救い家族を支える理念に賛同する各界の人たちと協力し、制度充実や支援強化を官民に働き掛けて、思いやりのある社会を実現したい」と抱負を語った。(共同=由藤庸二郎)

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