×
メニュー 閉じる メニュー

保因者は出血傾向の検査を 男性だけでない血友病 治療で生活改善が可能

2020.11.17 0:00
 血友病は一般的に、遺伝的素因を持つ母親から生まれた男児が発病すると考えられてきた。しかし近年、そうした考えを改めるべきだという提言が専門医や当事者から相次いでいる。素因を持つ女性(保因者)自身が、血友病と同様に出血が止まりにくい傾向があり、必要な治療を十分に受けられていないというのだ。専門医は、出血傾向に心当たりがあれば血を止める働きを調べる検査を受け、必要な治療を受けるよう呼び掛けている。
 ▽男女比の実態
 血友病は、出血を止める「凝固因子」の遺伝子のいずれかが欠けているか、働きが不十分なことで起きる血液凝固異常症。以前は、遺伝的素因を持っていても女性には症状は出ず、保因者の女性から生まれた男子が発症すると理解されてきた。国内の女性保因者は血友病患者の1・6~5倍、1万~3万人と推定されるが、血友病と診断される人はごく少ない。
 公益財団法人エイズ予防財団が厚生労働省の委託事業で、血液凝固異常症の患者数を調査した結果、血友病の二つのタイプ(血友病A、B)を合計した患者数は、男性が6517人に対して、女性は79人。海外でも同様の男女比が報告されているが、実態を反映していないことが分かってきた。
 
 

 

 ▽備えるために
 荻窪病院(東京)血液凝固科の長尾梓医師は「女性保因者では出血傾向があって治療を必要とする人が相当多いのではないか」とみる。
 中国の研究者が昨年発表した論文によると、女性保因者はそうでない女性に比べて、鼻血や皮下出血などの微量なものから、歯科での抜歯や外科手術などの医療に伴うもの、出産や産後の回復など、多様な場面で出血が多いことが分かった。
 血友病は遺伝子に関わる病気であるため、家系内に患者がいる女性も「保因者であること」の確定診断を受けるかどうかは重い判断だ。幼少期には遺伝子検査に踏み切れず、結婚や出産を控えた成人後に本人の判断に任せるケースが少なくない。
 だが、女性にも男性同様の症状があり得ることはほとんど知られていない。長尾医師は「遺伝的素因の診断はともかく、血を止める機能がどの程度かだけは調べてはどうか」と提案する。
 「凝固因子の活性を調べて出血傾向が分かれば、生活の支障を緩和するさまざまな治療がある。外科治療や歯の治療、出産などで、多量な出血を想定して備えておくこともできる」と話す。
 ▽気付きにくさ
 埼玉県に住む女性(42)は、第3子である長男が血友病と診断された後、主治医から自身も血が止まりにくい可能性を聞かされ、検査を受けたところ、健常者の平均の40%程度だった。
 女性はそのとき「これまでの経験が初めてすっきりと納得できた」と話す。
 かさぶたがはがれると1週間ぐらい血が止まらないことがあった。親知らずを抜くと、口元からあふれるほどの出血があった。初潮時には貧血になり、帝王切開だった第1子の出産でも輸血を必要とした。
 内出血ができやすい父に似たのか。漠然とそう思っていたが、その父も若くして膝が曲がらなくなる典型的な血友病の症状が現れたと知った。女性は今、自身の健康に気遣う一方で、長女、次女に症状が現れないか、見守っているという。
 長尾医師は「月経をはじめ出血傾向を他人と比べることはなく、気付きにくい。それが当たり前だと我慢する人も多い。家系内に血友病の人がいたり、月経が重い、血が止まりにくいと感じたりしたときは、積極的に受診してほしい」と話した。(共同=由藤庸二郎)

最新記事