メニュー 閉じる メニュー

制度不十分でも支援は可能 国立がんセンターが会社向け新ガイド

2019.9.10 0:00

 制度が不十分だから、中小企業だから、がんになった社員の支援は難しいと思っていませんか? 国立がん研究センター(東京)が企業の人事労務担当者向けに、実績ある対処法を解説した「がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック」を作成した。企業の規模によって事情が異なる可能性を考慮し、大企業編と中小企業編を用意。「貴重な人材を失わないための工夫を学んで」と呼び掛けている。

 

 ▽既存制度の応用

 ガイドは、同センターが2014年に始めた「がんと共に働くプロジェクト」で、全国から公募したがん経験者と企業の体験談を基にしている。編集には、仕事と治療を両立した当事者や社内環境を整えた社長、人事担当者、産業医ら11人もアドバイザーで加わった。

 作成実務の中心を担った同センターの高橋都がんサバイバーシップ支援部長は「先進的に両立支援をしてきた企業も、最初から制度が整っていたわけではない」と話す。

 
 

 ガイドは、既存の制度に少し変更を加えるだけでも働きやすくなる例を挙げる。有給休暇を1日単位だけでなく時間単位でも取れるようにする、育児や介護で認められる時短勤務を病気治療にも広げる、などだ。患者は通院や体調に合わせた勤務が可能になり、職場では、業務や時間の割り振りがしやすくなる。

 「相談窓口を明確にすること、社内制度を周知して相談しやすい環境をつくることも大切と分かった」と高橋さん。

 本人の気持ちに寄り添うほか、周囲の社員への配慮も忘れないなど、ガイドは当事者を支援する上で会社側が心掛けたい7カ条も掲げた。

 

 
      桜井公恵さん

 ▽職場に情報提供

 千葉県銚子市で社員40人余りの食品卸会社を経営する桜井公恵さん(51)は、ガイド作成のアドバイザーの1人。「特別な制度がなくても解決策はたくさんある」と話す。

 09年にベテラン女性社員が乳がんになり、9カ月休職した。桜井さんは女性と話し合い、1日2時間の勤務から始めてフルタイムに復帰するタイミングを決めていった。他の社員には女性の復帰の見通しなどを丁寧に説明し、スムーズな業務分担ができたという。

 桜井さんは、夫や先代の社長だった叔父ら複数の身内をがんで亡くした。「みんな治療を続けながら働いていた。意欲のある人が働くのを支援するのは当たり前です」

 ▽制度提案で貢献

 
    職場で上司(左)と話す村本高史さん

 企業側には「社内制度づくりに費用がかかるのでは」という懸念も少なくない。「がんを経験した社員と意見交換すれば、費用に関係なく支援を始めるきっかけになる」と提案するのは、当事者としてガイドに助言したサッポロビール(東京)の村本高史さん(54)。09年に頸部食道がんと診断され、11年に再発。声帯を摘出する手術を受けた後「食道発声」を身に付け会話をする。

 社内用の両立支援マニュアルの原案に助言を求められたことがある。本文の冒頭が休暇や休職制度の説明になっていたため「休むことが前提になっているのでは」と指摘したところ、人事担当者が思い込みに気付き、すぐ修正されたという。

 村本さんは「当事者の思いの共有や企業風土・制度に関する提言は会社への貢献にもなる」として今年3月、社公認でがん経験者が話し合う場づくりを始め、初回は12人が参加した。プライバシーに配慮し、話しやすい環境を心掛ける。支社や工場からの参加も呼び掛け、活動を充実させていきたいとしている。

(共同通信 山岡文子)

最新記事