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病気の子にも「かっこいい」を 広めたい「チャーミングケア」

2018.12.4 0:00

 病気や障害がある子どもにも「かわいい」「かっこいい」を当たり前にしたい。そんな思いで母親らが始めた洋服などの販売事業が広がりを見せている。寝たままでも着替えられる服、胃に直接栄養を送る「胃ろう」注入口のカバーなど、機能的で愛らしいケア用品が登場している。こうした商品の普及などを通じ、外見ケアは子どもや家族にも大切だとの考え方を発信しようと、市民団体が活動を始めた。専門家もその意義を認め、注目している。

 ▽市販品はなく

 東京都の奥井のぞみさん(34)は、医療ケアが必要な子どものための服やグッズを「パレットイブ」のブランド名でインターネットを中心に販売している。

 きっかけは重度の脳障害で生まれた長男(8)の着替えに困り、肌着を自作したこと。体を動かすことができず人工呼吸と胃ろうが必要な息子には、市販品を探しても合う物が見つからなかった。

 肩から袖口が全部開くように工夫した肌着に看護師は「着せやすい!」と驚いた。きれいな色で病室は明るくなった。

胃ろうカバー
   奥井のぞみさんが作った胃ろうのカバー

 奥井さんは「困っている人は他にもいるはず」と製作に没頭、服の種類を少しずつ増やして昨年、事業を本格化させた。肌触りのいい生地で作った胃ろうのカバーが人気商品だ。

 奥井さんより早い2012年から、障害があっても着やすい子ども服のネットショップ「ひよこ屋」を運営している滋賀県守山市の岩倉絹枝さん(41)も起業の原点は息子の病気。感染症と後遺症で入退院を繰り返すわが子に付き添いながら、病状や自分の将来に多くの不安を味わった。

 ▽つらさ忘れる

 病室で手にしたかわいい服が一瞬、つらさを忘れさせてくれた。その経験が今につながる。

 「かわいい!と思う3秒間は病気のことを忘れている。その3秒をつくれるかどうかを基準に商品を仕入れています」と話す岩倉さん。主に輸入品を扱い、各地で開かれる福祉機器展などのイベントに積極的に出店するが「服を必要とする人にまだまだ情報が届いていないと思う」と話す。

 
 石嶋瑞穂さん(左)が神奈川県内のイベントで展示したグッズを病気の子どもを連れて見に来た女性(石嶋さん提供)

 こうした思いを共有し、新たな取り組みを始めた人がいる。大阪府池田市の石嶋瑞穂さん(40)だ。

 白血病で入院した長男(9)が、幼いながら外見を気にする姿を目の当たりにした経験から、治療で脱毛した子のための帽子など、さまざまなグッズの製作販売を手掛けてきた。しかし「モノだけでなく、考え方を広めたい」という気持ちが強くなり、外見ケアを含む子どもらしさを大切にする支援を「チャーミングケア」と名付け、今年1月に市民団体「チャーミングケアラボ」を立ち上げた。

 かわいい、かっこいいを重視したケア用品の情報をサイトに載せるとともに、例えば外見ケアで子どもや家族がどう変わったか、といった経験談などを社会に発信していきたいという。

 ▽楽しんでいい

 外見ケアの重要性は、治療による脱毛などに悩む大人のがん患者を対象に注目されるようになり「アピアランスケア」と呼ばれている。

 その普及を先導する国立がん研究センター中央病院の野澤桂子アピアランス支援センター長(臨床心理士)は「おしゃれをはじめ、その人が生き生きと暮らせる手段は、病気や障害の有無に関係なく大切だが『病気なのにおしゃれなんて』という意識は残念ながらまだある。病気があっても障害があっても、本人も家族も人生を楽しんでいい。そうした認識を社会に広めるのに、チャーミングケアという考え方は役立つのではないか」と話している。

(共同通信 吉本明美)

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