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「病、それから」山口育子さん(ささえあい医療人権センターCOML理事長) 今を生きる幸せ実感

2018.5.29 11:00

 患者と医師らが手を携え、良い医療をつくる。その目標へ、利用者目線の病院評価や講座開設などの活動を30年近く続ける認定NPO法人COMLの理事長山口育子さん(52)。この道に入ったきっかけは20代で発症した卵巣がんだ。短命を覚悟したが「まだ果たすべき何かがあるはず」と踏み出した一歩が、人生を変える出会いにつながった。全力投入できる仕事に導いてくれた病気に「感謝しかない」と話す。

山口育子さん
    山口育子さん

 卵巣がんの診断は、再発も含め3回受けました。最初は1990年、24歳の時です。

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 ▽がんを隠され

 下腹部の痛みと不正出血で受診したら、左の卵巣が大きく腫れているということで手術が決まりました。主治医は初めからがんを疑っていたようですが、当時がん告知は一般的でなく、私への説明は一切ありません。さらに悪いことに、手術予定の2日前、卵巣が破裂してしまったんです。

 激痛に襲われ、手術を受けたのですが、その後も説明は全くなし。両親は「3年生きる確率は2割ありません。本人が知ったら立ち直れない。隠し通してください」と口止めされたそうです。

 別の医師からがんであることを聞き出しましたが、主治医は、8カ月後にがんが再発し新たに抗がん剤治療を行う際にも、病名を明かしません。

 ▽私が決めたい

 仮に短くても、生きている間は私の人生。どう生きるかは自分で決めたい。病状をありのまま知り、納得して治療を受けたい。何度そう訴えても、主治医の理解は得られませんでした。

 長く生きられそうもないことは覚悟しましたが「生きた実感を得ることは成し遂げていない」とも思っていました。

 そんな時、新聞で「賢い患者になりましょう」を合言葉にCOMLを創設した辻本好子(故人)のインタビュー記事を読みました。活動の理念に共感し、思いを託した手紙を書いたことから、辻本に「一緒にやろう」と誘われました。

 92年にCOMLスタッフとなり「患者と医療者のコミュニケーション講座」など、相互理解のための活動を充実させてきました。

 ▽人間対人間で

 直近の卵巣がん診断は2011年、進行胃がんになった辻本が終末期の闘いをしている最中でした。彼女が昏睡状態になった翌日が私の入院日。迷いましたが「早く治してCOMLを継続させる」と決意し、手術を受けました。がんの悪性度は低いという診断でした。

 COMLを引き継いで7年。私たちの財産の一つは患者からの6万件近い電話相談です。うち2万件以上は私が受けました。じっくり話を聞いて問題整理のお手伝いをします。最近は、あふれる情報の中で戸惑う患者の声が多くなっています。

 こうした実績を背景に「患者や市民の立場で医療への意見を」と求められる機会が増えました。賢い患者と、良い医療の実現に貢献できる市民を増やすのが生かされた私の役目。そう考え、昨年から新しい講座も始めました。

 20代から卵巣がんを3回。普通はマイナスと考えるでしょうが、私には「今を生きている幸せ」を実感したり、素晴らしい出会いを得たり、プラスがはるかに多いです。

 辻本の闘病を支えて気付いたことがあります。がん経験がある者同士でも、患者は一人一人全く違う。他者の経験は参考になるけれど、生き方や病気との向き合い方はその人だけのもの。だから患者と医療者が「人間対人間」という基本に立ち戻り、関係を築くことが大切なんだと思います。

(聞き手・吉本明美、写真・萩原達也)

◎山口育子さん 1965年大阪市生まれ、大阪教育大卒。2011年COML2代目理事長に。16年認定NPO法人化。国の審議会など医療関係の90以上の会議で委員を務め、市民の立場で政策提言を続ける。17年には市民側委員を養成する新講座も開設した。

◎卵巣がん 子宮の左右に一つずつあり排卵などの機能を担う卵巣にできるがん。40~60代に多い。初期はほとんど症状がないため進行して見つかることが珍しくない。治療の基本は開腹手術。進行度などに応じて術後抗がん剤治療が行われる。

 

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