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「コロナ虚弱」に懸念 高齢者の外出が減少 自治体の役割が重要

2020.11.24 0:00
 なかなか終わりが見えない新型コロナウイルスの流行。お年寄りが感染を恐れて自宅に閉じこもりがちな暮らしが長く続くと、身体機能や認知機能が低下して要介護の一歩手前の「フレイル(虚弱)」と呼ばれる状態に陥る懸念がある。東京大高齢社会総合研究機構の調査で、本格的な流行前に比べると、高齢者が外出して体を動かしたり、人と触れ合ったりする機会が減っていることが明らかになってきた。機構長を務める飯島勝矢東大教授は「この状態が続くと来年以降に『コロナフレイル』が顕在化する恐れがある」と指摘。「新たな生活様式に合わせた健康づくりを全国の自治体が責任を持って進めることが必要だ」と訴える。
高齢者の「フレイル(虚弱)」対策を進める東京大の飯島勝矢教授(東京大提供)
高齢者の「フレイル(虚弱)」対策を進める東京大の飯島勝矢教授(東京大提供)

 

 ▽ダブルパンチ
 同機構のチームは東京都西東京市に住む65歳以上の約300人に、コロナ流行の前後で生活の変化を尋ねた。流行前には6割以上の人が「毎日外出する」と答えていたが、流行後には4割以下に減った。「2~3日に1回」「週に1回」の人も加えると、4割以上の高齢者で外出の頻度が顕著に低下していた。
 気になるのが外出が「週1回未満」の“閉じこもり傾向”の人だ。「バランスの良い食事ができていない」と答えた人が多く重なる。食生活の質が低下していることがうかがえる。
 「老化によって腕や脚の筋肉は減るが、適度な運動とタンパク質が豊富な食事である程度補うことができる」と飯島さん。「コロナが怖くて散歩や買い物に行かなくなり、乏しい食材で栄養不足に陥るダブルパンチが心配だ」と話す。
 ▽人との交流
 高齢者の閉じこもりは心の健康も損ねる。身近な人と会話し、つながり合うことが元気で長生きする秘訣だ。
 飯島さんらが全国の自治体に呼び掛けて地域ぐるみの「フレイルチェック」活動を広めているのはそうした理由から。お年寄りが公民館などに集まって互いの健康状態をチェックする。孤立しがちな人に社会参加を促すのも狙いだ。
 昨年までに66自治体がこの試みを導入。地域で活動の中心を担う「フレイルサポーター」も増えたが、今年になってコロナ流行で活動停止を余儀なくされた。
 「再開してほしい」との声が強まり、6月にはビデオ会議システムを使ってサポーターや自治会関係者ら400人超が“決起集会”を開催。感染防止策を講じながら再開する自治体も出てきた。
 九州の自治体でフレイルチェックに参加した約30人を調べると、自粛期間中に2人に1人で筋肉量や握力が低下したり、滑舌が悪くなったりしていた。人との交流が少なかった人でこの傾向が強かった。
 ▽まちづくり
 岐阜県輪之内町は10月、8カ月ぶりにフレイルチェックを再開。高知県や東京都の自治体では高齢者がマスクや防護服を手作りし、介護施設などに配布している。直接集まらなくてもビデオ会議システムで週1回つながり、自宅で運動する会を始めた例もある。
岐阜県輪之内町で再開した「フレイルチェック」=10月(同町提供)
岐阜県輪之内町で再開した「フレイルチェック」=10月(同町提供)

 

 それでも多くの自治体が活動を停止したままだ。「1人でも感染者が出るのを極端に心配している。自治体が萎縮してフレイル状態になっている」と飯島さん。「感染者が少ない地域では注意しながらフレイル対策を進めることが可能だ」と自治体の役割の重要性を訴える。
 飯島さんは自治体の首長や筑波大、千葉大の研究者らと共同で、人とのつながりとオンラインをうまく併用し、まちづくりと一体化した高齢者対策を進める「ハイブリッド型」の健康社会を自民党などに提言している。(共同=吉村敬介)

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