妊婦の体重分かりやすく 増加の目安、曲線で  やせも肥満も要注意

2021年12月21日
共同通信共同通信
 妊娠中や出産時に母体に無理がかからず、生まれる赤ちゃんの健康リスクも少ない体重の増加曲線の目安を、国立成育医療研究センターや九州大のチームが作成した。日本産科婦人科学会の数値に合わせ、妊娠前の体格に応じて出産までに体重がどう増えるのが望ましいか幅を持って示した。同センターの森崎菜穂社会医学研究部長は「少しぐらい外れていても神経質になりすぎず、自分の体重がどのような経過をたどっているか意識してほしい」と話す。
 
 

 

 ▽飢餓の冬
 妊娠中の体重と母子の健康の関係については多くの研究がある。有名なのが「オランダの飢餓の冬」研究だ。
 第2次世界大戦末期にドイツ軍が占領するオランダで寒さと食糧不足による飢饉(ききん)が起きた。極端な低体重で生まれた子を追跡すると、大人になって肥満や高血圧、糖尿病になる例が多いことが分かった。環境ストレスで遺伝子の働きが変化したと考えられている。
 日産婦の「産婦人科診療ガイドライン」によると、妊婦がやせすぎだと赤ちゃんが低体重や早産で生まれたり、母体が貧血になったりするリスクが高くなる。
 逆に太りすぎだと胎児が大きくなって帝王切開のリスクが高い。妊娠高血圧症や妊娠糖尿病のリスクも高まる。やせも肥満も注意が必要だ。
 ▽やせ志向
 欧米では肥満の妊婦が多いが、日本ではやせた人が多い。体重を身長の2乗で割った体格指数(BMI)で見ると、日本人女性の平均値は1970年代以降は減少傾向。特に18・5未満の「低体重」の割合が増加し、2017年には20~29歳の21・7%、30~39歳の13・4%を占めるようになった。
 一方で2500グラムに満たない低出生体重児の割合は、1975年の5・1%から2004年に9・5%に上昇した。
 「やせ志向が増えた女性の体形イメージの変化も背景にある」と森崎さん。出産後にスマートな姿で登場するセレブがもてはやされる風潮も関係していそうだ。
国立成育医療研究センターの森崎菜穂社会医学研究部長
国立成育医療研究センターの森崎菜穂社会医学研究部長

 

 ▽通り道
 日産婦は今年、妊娠前のBMIに応じて出産までどの程度の体重増加が適切かの目安を示した。太っている人は過度に体重が増えないように、やせている人はむしろ体重が増えた方が自然だという考え方。あまり厳格な指導でなく、個人差を考慮した緩やかな体重管理を医師らに呼び掛ける。
 BMIが18・5未満の「低体重」は12~15キロ増、25以上30未満の「肥満」は7~10キロ増が目安。30以上の人は医師と相談して個別に対応し、5キロ増を上限と考える。日本人女性の多くを占めるBMI18・5以上25未満の「普通」の人は10~13キロ増が適正とされる。
 ただ10カ月先の目標を示されても、自分がその経過をたどっているかどうかを知るのは難しい。そこで森崎さんは九州大の諸隈誠一教授らと共同で、無理なく目標に到達するための「通り道」を分かりやすい曲線で示すことを考案した。
 環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを利用。約10万人の妊婦の体重変化を統計的に推計し、妊娠中のある時期に体重がどの範囲に収まれば安心かを図示した。
 BMIごとに4タイプ作成。「普通」の人は妊娠30週で6・4~9・1キロの増加なら順調といった具合だ。
 国立成育医療研究センターのホームページからダウンロード可能。印刷して自分に合ったものを切り取り、母子健康手帳に挟んで使える。
 森崎さんは「データ利用は自由。ぜひ企業にスマートフォンのアプリなどに応用してほしい」と話す。(共同=吉村敬介)