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病気の子、犬が支える 検査や手術に付き添い ファシリティードッグ

2021.9.3 0:00
 小さな子どもが病気になると、治すためだと分かっていても、検査や治療、リハビリのたびに痛みや不安など強いストレスを受ける。そんなとき、優しい目をした犬がそばにいればどうだろう。不安や痛みを和らげ、家族や周囲の人を癒やす仕事を担うのが「ファシリティードッグ」だ。日本でも小児専用病棟で導入が始まったが、一層の普及には多くの課題も残る。
病棟で実地研修中のマサ。入院中の子どもとスキンシップで関係づくりを図る=6月、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター(同センター提供)
病棟で実地研修中のマサ。入院中の子どもとスキンシップで関係づくりを図る=6月、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター(同センター提供)

 ▽4施設目

 ファシリティードッグは、随時の訪問などを主としたセラピードッグとは異なり、特定の施設に所属して活動する犬のことだ。2010年に静岡県立こども病院が国内初導入。その後、12年に神奈川県立こども医療センター、19年に東京都立小児総合医療センターに配置された。
 4施設目は東京都世田谷区の国立成育医療研究センターだ。今年7月1日、ファシリティードッグの「マサ」(ラブラドルレトリバー、オス2歳)と、犬を管理して行動を指示する「ハンドラー」の権守礼美さんに委嘱状が手渡された。
 権守さんは小児看護専門看護師の資格も持つ臨床経験25年のベテラン看護師。先輩ハンドラーの活躍を見て志し、専門の訓練を受けて認定された。
 マサは、性格まで見極められて選ばれた1頭。国内で育成されたファシリティードッグとして初の配属。生後すぐから訓練に励み、権守さんが「優しく落ち着きがあり、役に立つことが好き」と信頼するパートナーだ。
 ▽痛みを軽減
 日本で普及プロジェクトを進める認定NPO法人「シャイン・オン・キッズ」によると、ファシリティードッグの仕事は多岐にわたる。
 入院している子どもとの触れ合いや添い寝、手術や検査の際の付き添い、薬が飲めない子や食事が進まない子の支援、きょうだいや家族のケア、リハビリ支援などに当たる。イタリアの小児病院の研究では、血液検査を受ける子どもの注射針による痛みが、犬の付き添いで軽減されたとの結果が出ている。
 
 

 

 医療機関で日常的に動物が活動するため、感染予防などの安全対策には特に気を使う。犬の健康管理はハンドラーの大事な仕事。毎日の健康状態のチェックや毛繕い、定期的なシャンプー、病室に入るときの足拭き、犬が触れたところの消毒などが必須だ。
 静岡県立こども病院など国内外からの報告で、ファシリティードッグの導入は院内の感染率や見つかる細菌に影響しなかった。国内11年の導入実績でも感染事故はない。
 ▽普及に課題
 国内の小児医療機関は多数あり、普及はまだまだだ。シャイン・オン・キッズの村田夏子プログラム・マネージャーによると、当面は全国の小児がん拠点病院の数に相当する15施設の導入を目指すが、現状では年1カ所の配置が精いっぱい。1施設で1千万円以上かかる運営費などの資金調達も難題で、ウェブサイトなどで常時寄付を募っている状態だ。
 村田さんは、病気の子に犬が寄り添うことの医学的な効果を確かめ、日本からも発信する必要もあると考えている。「成果によって医療関係者や病院経営者が導入時の費用対効果を判断しやすいようにしたい」と話す。
 人の養成も急がれる。犬を国内で育成するために訓練に当たる専属のトレーナーも育てたい。ハンドラーの増員も不可欠だ。日本初のハンドラーである森田優子さんは「医療に従事した経験を生かして患者を支える、やりがいのある仕事。ぜひ応募してほしい」と呼び掛けた。(共同=由藤庸二郎)

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