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がんでも「自分らしく」 プロの手で笑顔を写す  人気企画のフォトブック刊行

2021.3.23 0:00

 「がんになっても笑顔で暮らせる社会」を目指して2017年に発足したプロジェクト「ラベンダーリング」。その活動の一環で、がんの患者や経験者をプロがメークして撮影する人気企画が、フォトブック「自分らしく、を生きていく。―がんとともに生きる206人の笑顔と想い」として刊行された。がん患者をひとくくりにさせず、一人一人が、ありのままに生きるきっかけにしたいとしている。
 ▽何ができるか

がん患者、経験者の撮影会場に立つ御園生泰明さん=2018年8月、東京都中央区(本人提供)
がん患者、経験者の撮影会場に立つ御園生泰明さん=2018年8月、東京都中央区(本人提供)

 企画を発案したのは広告代理店勤務の御園生泰明さん(43)。御園生さんは15年、会社の健診で肺にがんが見つかった。
 治療しながら仕事は続けた。だが体力に自信がない。上司や同僚の理解と支えはあったものの、折々に不安が高まって落ち込んだ。そんなある日、目に留まったのが元フットサル日本代表、久光重貴さん(2020年12月逝去)の記事だった。
 久光さんは骨髄炎を発病後、厳しいリハビリの後に現役復帰したものの、さらに肺がんが見つかった。その経過を追った記事だが、添えられた写真には、はつらつと球を追うユニホーム姿が。
 「感銘を受けた。自分にも何かできるのでは、人の役に立てるのではないかと思った」。御園生さんは、認定NPO法人キャンサーネットジャパン(東京)とともに賛同企業を募り、ラベンダーリングの前身を設立。多くのがん患者に、自分と同じ気持ちを届ける方法はないかと発案したのが「メーキャップ&フォト」、プロの手による撮影の企画だった。
 ▽肩書は多種多様
 17年夏に東京都中央区で開かれた「ジャパンキャンサーフォーラム」は、全国のがん患者や家族が集まるイベント。専用ブースを構え、趣旨に賛同した各分野のプロが参集。2日間で60人を超えるがん患者、経験者にメークを施し、撮影した。以来、回を重ねるごとに人気を呼ぶ。
 刊行前に撮影したのは計227人。本に収録した写真の大半には、現場でのインタビューで得た本人の言葉を添えた。巻頭は久光さん。現役復帰を決意したときの気持ちである「自分が、前例になる」のひと言が残る。
 参加者が自己申告した肩書は多種多様だ。モデル、教師、医師、ジャーナリスト、歌手…。母親や美食家、愛妻家もいる。もちろん「がんサバイバー」と名乗る人も多い。全ての被写体に共通するのが満面の笑みだ。
 ▽自分を変えた
 高木健二郎さん(57)は、12年に食道がんが見つかり、摘出手術を受け、手術による神経障害に対応する処置も受けた。

「自分を変えた1枚」と言うフォトブックの写真を示す高木健二郎さん=東京都品川区
「自分を変えた1枚」と言うフォトブックの写真を示す高木健二郎さん=東京都品川区

 

 ラベンダーリングの撮影に応募したのは単純に好奇心からだったが、その効果は「劇的」。メークや髪形にプロの手が入って「これは自分なのか」と思う仕上がり。気に入って、会員制交流サイト(SNS)のプロフィル画像にも使った。
 高木さんはこれを機に昨年、医師の呼び掛けに応じ、発起人として患者会「食道がんサバイバーズシェアリングス」を設立。オンライン交流会や情報発信を始めた。会の名前には、経験を共有(シェア)して患者同士が交流の輪(リング)を広げる思いを込めた。
 「この写真が、自分を変えた1枚になった」と振り返る。「『がんになって仕事がだめになったと思われたくない』などの、それまでの重圧から解放された。過去への未練を断ち、歩きだすことができた」と話した。
 ラベンダーリングでは、コロナ禍の影響で会場での撮影会は見通しが立たないが、オンラインでプロがメークを指導し、参加者が“自撮り”する催しを開催。今後も不定期に開催する予定だ。
 フォトブックはハースト婦人画報社刊、1980円。(共同=由藤庸二郎)

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