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がん検診にもコロナの打撃 「要精検」放置しないで 休止で発見遅れに懸念 

2020.10.1 16:17
 新型コロナウイルス感染症の流行で、がん検診を休止する自治体や団体が相次いだ。感染防止対策を施した上で徐々に再開されたものの、医療機関に足を運ぶのをためらう人もいて、受診者数は回復していない。専門家は、がんの早期発見に影響が出るのではないかと懸念。特に、新型コロナ流行前の検診で「精密検査が必要」とされた人は、放置してはいけないと指摘している。
シールド越しに対応する住民検診の受付。予約制のため行列はできない=8月、栃木県栃木市の栃木保健福祉センター
シールド越しに対応する住民検診の受付。予約制のため行列はできない=8月、栃木県栃木市の栃木保健福祉センター

 


 ▽密集防ぐ
 8月のある日、栃木県栃木市の栃木保健福祉センターには、対策型検診(住民検診)を受ける住民が集まっていた。
 入り口で検温と新型コロナに関する問診票の確認。身体測定や眼科検診、採血などの順番待ちの椅子は間隔を広く取り、入り口と窓は開け放って換気に努めている。いずれも、日本総合健診医学会や日本対がん協会、日本病院会など8団体の推奨する方法に沿った感染予防策だ。トイレで密になるのを避けるため尿検体を持参してもらう独自対策も追加した。
 同県内の対策型検診を受託している栃木県保健衛生事業団の手塚真史健診推進課長によると、4、5月は住民検診を休止。再開後も受診は予約制で、30分ごとに人数を割り振って会場内の密集を防ぐ。栃木市の担当者によると、休止の影響を年度内には解消できず、受診者は昨年度の75%程度にとどまる見込みだ。
 ▽受診4割減も
 日本対がん協会(東京)は6月、自治体などから対策型検診を受託する全国の支部に、今年1~5月のがん検診受診者数について尋ねた。
栃木保健福祉センターで、密を避けるため距離を取り、ついたてを隔てて順番を待つ住民検診の受診者。窓も開け放たれている=8月、栃木県栃木市
栃木保健福祉センターで、密を避けるため距離を取り、ついたてを隔てて順番を待つ住民検診の受診者。窓も開け放たれている=8月、栃木県栃木市

 

 32支部から回答を得て2018、19年の受診者数と比べると、1、2月はほぼ例年通りだが、3月はやや低迷。流行がピークを迎えた4月は例年の約19万人に対してわずか約3万人、例年約45万人が受診する5月も3万7千人余りに激減した。
 6月から順次再開したが、1日当たりの受診者数を制限したり、予約制にしたりした混雑緩和策で受診者数は少なめ。アンケートで本年度の受診見通しを尋ねると「3割減」が12支部(38%)、「4割減」が9支部(28%)だった。
 同協会がん検診研究グループの小西宏マネジャーによると、例年の受診者数は全42支部で延べ約1100万人。約1万3千人にがんが見つかっている。受診が3割減れば4千人近いがんの発見が遅れる計算だ。「毎年100万人が新たにがんになり、その約4分の1は各種の健診で見つかる。受診減は将来のがん死亡率にも悪影響を及ぼしかねない」(小西さん)
 ▽進行する前に
 がん検診へのコロナのリスクは、受診者数の問題だけにとどまらない。
 大腸がんの専門家である国立がん研究センター中央病院の松田尚久検診センター長(消化器内科)によると、大腸がんでは検診で見つかるうち60%が早期がんであるのに対し、自覚症状などで病院を受診して見つかるのは79%が進行がんだったとの厚生労働省研究班の研究結果がある。
 
 

 


 便潜血検査で千人が検診を受けると、うち60人が陽性と判定され、2人でがんが見つかることが分かっている。精密検査を推奨された人が受診せずにいると、米国の研究では10カ月、台湾の研究では6カ月で大腸がんのリスク、がんが進行するリスクがともに上昇するとの報告もある。
 松田さんは「がん検診の対象となる胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんはどれも、次の検診まで放置した場合、病気が進行する恐れがある」と指摘。「検診で『精密検査が必要』といわれた人はためらわず、できるだけ早く受診してほしい」と強調した。(共同=由藤庸二郎)

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