【5156】旭鳳 始 真吟 火入れ(きょくほう はじめ しんぎん)【広島県】


夕食をとりに、なじみの食事処へ。「こんなのありますが、飲んでみませんか?」。店主がわたくしに1本の酒瓶を持ってきた。「旭鳳 始 真吟 火入れ」。「旭鳳」が広島県の地酒であることを知っており、当連載でこれまで、4種類を取り上げているが、この酒は飲んだことがなかった。だから、「あ、はい、飲みます、飲みます」と二つ返事で受け入れる。さて、いただいてみる。
香りは果実香がほのか。さらり、さっぱりとした口当たり。軽快感あり。実に清らか、非常に清冽、きれいな酒。さわやかな酸を感じる。この酸が控えめながら、実に良い。旨みは適度に感じられ、奥に甘みがすくなめにある。エンディングはやや辛みと苦み。余韻の苦みがやや強い。
飲み進めていくと次第に旨・酸・苦・辛で味が構成される軽快な酒、というイメージになっていく。非常に飲みやすく、飲み飽きしないタイプのお酒。食中酒に適している。中でも和食に非常に合いそうなお酒だとおもった。クラシックタイプのライトボディー酒。あるいは爽酒。あるいは淡麗辛口酒。
瓶のラベルのスペック表示は「原料原産地名 広島県産千本錦、精米歩合60%、アルコール分16度、製造年月22-07」。原料米の「千本錦」は広島県立農業技術センターが1990年、母「中生新千本」と父「山田錦」を交配。育成と選抜を繰り返して開発、2002年に品種登録された。広島県だけで栽培されている酒造好適米。
瓶のラベルには「広島醗酵共同研究会」と題し、以下の文章が掲載されている。
「温暖な地域から寒冷な地域まである環境で、それぞれの蔵が酒造りをしている広島。蔵のアイデンティティを活かす酒造りを目指し、酒業界に活力を与える団体として2022年1月より活動を開始する」
タイトルの「広島醗酵共同研究会」と説明文とこのお酒の3つの関係が全く分からない。1ミリも分からない。おそらく、蔵元さんは、分かり切ったことを今さら、という気持ちで説明していないのだろうが、門外漢のわたくしは、まったく分からない。自分たちだけが分かる、というのは良くない。多くの人に知ってもらう文章を書いてほしい。
ということで、「広島醗酵共同研究会」とは何者で、この酒とどういう関係にあるのか、ネットのお世話になって調べてみた。「さかや栗原」(東京都町田市)のサイトが一番要領良くまとめていたので以下に転載する(一部省略)。
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広島醗酵共同研究会とは、広島県の3つの蔵元【旭鳳酒造(旭鳳)、藤井酒造(龍勢)、三輪酒造(神雷)】が2022年1月に設立した発酵文化を研究する任意の団体です。今回は、その研究会の第二弾!火入Ver.!
原料は「広島サタケ真吟精米」「千本錦」「酵母KA1-25」「丸広麹」と限界まで同じ素材に統一して、3蔵がそれぞれ同じスペックにてお酒を醸します。
【研究目的】
地域特性と技術の違いがどの程度酒質に影響を及ぼすのかを、同一原料を用いた醸造で明らかにする。加えて、株式会社サタケが開発した新たな精米技術「真吟」の可能性を探る。検証方法地域特性の異なる広島県内3蔵にて、可能な限り同一原料を用いての試験醸造を行う。
【真吟について】
真吟精米とは、米の形を残しながら平べったく磨くことでタンパク質を効率よく削り取ることができる精米方法。従来精米と比べるとでんぷんの削りすぎが軽減されるため、大吟醸酒のようなすっきりした味わいを引き出すことが可能となる。始 -HAJIME-で採用している精米歩合60%の真吟米は、精米歩合40%の球形米のタンパク含有量に相当するとの研究結果も出ているとの事です。
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酒名「旭鳳」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。
「三代目濱村忠が春の暁、瑞兆あふれる夢を見たことによるもので、東にそびえる高松山に神々しく朝日が昇る。折りしも、その朝日に向かって瑞鳥『鳳凰』が輝きつつ舞い上がる夢であったことから『旭鳳』と命名それまでの『新鷹山』を改め、酒銘『旭鳳』(きょくほう)として現在に至っています」