【5058】出雲富士 超辛口 純米吟醸 佐香錦(いずもふじ)【島根県】


【B居酒屋にて 全5回の④】
飲兵衛は年末、なじみの酒屋を挨拶回りする。俗に“檀家回り”ともいう。飲む口実が出来、飲兵衛にとって年末は楽しい時季だ。もちろんB居酒屋に顔を出す。おそらく2022年、わたくしが一番多くの種類の酒を飲んだのは、このB居酒屋であるのが間違いのないところだから。というよりは、断然トップだ(笑)
「日高見」「五稜特別純米 辛口」「五稜 純米吟醸」と飲み進め、次にいただいたのは「出雲富士 超辛口 純米吟醸 佐香錦」だった。富士酒造のお酒は当連載でこれまで、「出雲富士」7種類を取り上げている。今回のお酒をいただいてみる。
仲居さん「水の如し、だね」
酒蛙「うん、非常に淡麗。キレが良い。でも、旨みと酸を感じる。さっぱり、すっきりとした口当たり。3口目あたりから、後味に辛みが出て来る。しかし、この辛みは、味のしないドライなだけの超辛口とは違い、旨みを感じ、酸も出ているのでいい。やはり、余韻の酸がいい」
仲居さん「悪口を言うと、あたしには物足りない」
酒蛙「酒の好みは人それぞれさ。淡麗辛口酒を好む人もまた多い。すごくさっぱりした、きれいなお酒。酸が出ているので、飲み飽きしない。宴会酒や毎日の晩酌酒、食中酒に向いている」
客K「言っていること、分かる、分かる。ガバガバ飲む酒ね!」
酒蛙「クラシックタイプのライトボディー酒。あるいは爽酒。あるいは淡麗辛口酒。酒を表現する言葉って、さまざまあるけど、一つだけでは表現しきれないね。全部合わせて、初めて分かるような気がする」
瓶の裏ラベルは、この酒を「出雲の軟水と木槽搾りと佐香錦が醸し出す爽快辛口純米吟醸 人と食の良き縁をキレ良くスッキリと結びます」と紹介している。
裏ラベルのスペック表示は「使用米 島根県産佐香錦(さかにしき)100%、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合55%、アルコール分16度、目標日本酒度+15、製造年月 令和4年11月」。
使用米の「佐香錦」は、島根県農業試験場が1985年、母「改良八反流」と父「金紋錦」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定。2004年に品種登録された酒造好適米だ。出雲市にある佐香神社は、お酒の神様として名高い。この神社の名にあやかった品種名だ。
出雲富士は、鳥取県と岡山県にまたがる中国地方の最高峰、標高1,729mの大山の別称。大山はまた伯耆富士とも呼ばれる。出雲富士はまた、島根県松江市にある枕木山(標高453m)の別称でもある。
酒名「出雲富士」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。
「古来から富士山といえば日本の象徴で、日本人の誇れる存在です。出雲の地で、富士山のように愛される日本一の出雲の地酒を造りたいという大きな志を込めて、初代蔵元今岡正一により命名されました」