【5048】花邑 純米吟醸 出羽燦々(はなむら)【秋田県】


【E居酒屋にて 全7回の⑥】
先だって、なじみのE居酒屋の女将さんから連絡が入った。「新しいお酒をたくさん入れたので、飲みにいらっしゃい」。さっそく訪れ、4種類の酒をテイスティングしたところで、客3人組が入ってきた。3人ともタバコぶかぶか、カラオケがんがんやらかしたため、とてもじゃないけどテイスティングに集中できない。ということで、いったん打ち切り、後日出直し、テイスティングの続きに取り組んだ。
「央」「超」「くどき上手」「作」「写楽」と飲み進め、次にいただいたのは「花邑 純米吟醸 出羽燦々」だった。両関酒造のお酒は、当連載でこれまで「両関」3種類、「花邑」4種類、「翠玉」3種類を取り上げている。そのうち今回のお酒は、当連載【4289】で取り上げた「花邑 純米吟醸 出羽燦々 生酒」の火入れバージョン。
「両関」といえば以前、大衆居酒屋さんのお酒というイメージがあったが、この「花邑」でまったく違う“顔”を見せている。なじみだったM居酒屋の店主が以前話していたことによると、「この『花邑』は、あの『十四代』の蔵元さんが、異例の技術指導をして立ち上げた新しいブランドです」とのこと。「十四代」の高木酒造が個別に指導した、ということで全国的知名度が一気に高まった「花邑」と「翠玉」はトレンド感いっぱいのモダンな味わいのお酒、というイメージがある。さて、今回のお酒はどうか。いただいてみる。
上立ち香は華やか。メロンと桃を足して2で割ったような果実香が広がる。やわらかな口当たり。甘みが出ており、甘旨酸っぱい味わい。酸の出方は適度でジューシー感あり。余韻は適度な苦み。バランスが良い酒だが、味わいの中ではやはり、甘みが一番出ているようにおもえた。全体的に“きれい感”が漂う。甘美という言葉がふさわしいお酒かも。モダンタイプ寄りのミディアムボディー酒。あるいは、醇酒的薫酒。あるいは、芳醇甘口酒。
裏ラベルはこの酒を「純米吟醸 花邑(はなむら)は、風味を損なわないよう、搾って間もないお酒を1本ずつ丁寧に手詰めをし、瓶火入れを行いました。適度に冷やして、上立つ吟醸香をお楽しみ下さい」と紹介している。
裏ラベルのスペック表示は「瓶火入れ一回、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 出羽燦々100%使用、アルコール分15度、精米歩合50%、製造22.11」。
使用米の「出羽燦々」は山形県立農業試験場庄内支場が1985年、母「美山錦」と父「華吹雪」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、1997年に種苗法登録された酒造好適米だ。
蔵名および主銘柄「両関」の由来について、コトバンクは、以下のように説明している。「清酒の酒名に多く使われる『正宗』は鎌倉の刀工・正宗に由来するが、これを作刀における東の大関に見立て、京の三条宗近を西の大関とし、東西の名匠にあやかり酒名を『両関』とした」。ちなみに、大関とは大相撲の番付の最高位のこと。当時は横綱が無く、大関が今の横綱的存在だった。