【4975】吾有事 尖鋭辛口 純米大吟醸(わがうじ せんえい)【山形県】

2022年12月04日
酒蛙酒蛙
山形県鶴岡市 奥羽自慢
山形県鶴岡市 奥羽自慢

【S蕎麦屋にて 全4回の➁】

 S蕎麦屋は、かけそばが絶品なうえ、蕎麦屋にしては置いている酒の種類が多い。蕎麦好き&酒好きのわたくしとしては、こたえられないシチュエーション。「新しいお酒が入りましたよ。いらっしゃい」と連絡が来たので、すみやかに暖簾をくぐった。

 まず最初にいただいたのは「吾有事 特別純米」。続いて飲んだのも同じ銘柄「吾有事 尖鋭辛口 純米大吟醸」だった。この蔵のお酒は当連載でこれまで、4種類を取り上げている。今回のお酒はどうか。酒名の副題「尖鋭辛口」にビビりながらいただいてみる。

 大吟醸だが、香りはほのか。さっぱりとした口当たり。これが第一印象だった。次に酸が来る。中盤から余韻までは、辛みが来る。キレが良い。たしかに辛口だが、旨みの無いドライなだけの辛口酒とは違い、甘旨みのあるしっかりとした味わいの辛口なので好感が持てる。先に飲んだ「吾有事 特別純米」同様、微発泡感があり、グラスの内側に気泡がすこし付く。フレッシュ。飲み進めていくと、最初に感じた酸がどこかに行き、辛みだけを感じるようになる。

 この酒はしっかりとした味わいの酒だが、先に飲んだ「吾有事 特別純米」の方が分厚い酒質。間違いなく辛口酒だが、酒名にうたっている「尖鋭辛口」ほどではない、と感じた。最初、さっぱりとした口当たりに感じたのは、直前に飲んだ濃醇酒「吾有事 特別純米」に舌が影響を受けていたためとおもわれる。この「吾有事 尖鋭辛口 純米大吟醸」は、辛口酒だが、いわゆる軽快な淡麗辛口ではなく、しっかりした辛口の、クラシックタイプのミディアムボディー酒と感じた。

 瓶のラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米使用)、精米歩合50%、アルコール分15度、製造年月2022.9」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 蔵のツイッターは「蔵元の創業は亨保9年(1724年)。2012年より3年ぶりに酒造りを再開」と自己紹介している。蔵再開のいきさつについては、2012年12月14日付の荘内日報の記事に詳しい。記事のリード部分を以下に抜粋する。「「2009年度を最後に仕込みをやめ休業していた清酒「奥羽自慢」の佐藤仁左衛門酒造場(鶴岡市上山添)が仕込みを再開し13日、今期初の搾り作業を行った。300年近い歴史を誇る蔵元だが、財政難などから廃業の方向にあった。『伝統の蔵元をなくしたくない』と楯の川酒造(酒田市山楯)が支援に乗り出し復活したもの」

 また、「吾有事」の由来とコンセプトについて、蔵のフェイスブックは以下のように説明している。

「吾有事 - 多くの方にとって聞きなれない言葉かと思いますが、この言葉は、鎌倉時代の禅僧・道元禅師によって生み出されました。『自分の"存在"と"時間"が一体となる』。このような意味があります。難しいお言葉ですよね。それでは、このような経験はありませんか? 
- 何かに熱中しているとき、いつの間にか時間があっという間に過ぎてしまった。
これこそが『自分の"存在"と"時間"が一体となる』瞬間 - 自分と時間が溶け合っていること - ではないかと思うのです。そして、私たちにとって時間と一体になるほど熱中できる時間 - それが酒造りです。『時間を忘れる程に熱く、酒造りを極めていきたい』。そんな想い込めて『吾有事』と命名いたしました」

 主銘柄名および蔵名の「奥羽自慢」の由来について、蔵のツイッターは「酒名の由来は『品質本位の酒造りで酒処東北においても自慢の酒を醸す』との酒造理念から命名されました」と説明している。

 荘内日報の記事にあるように、奥羽自慢は、楯の川酒造のグループ会社であり姉妹蔵の関係にある。両社とも佐藤淳平さんが代表を務めている。