【4974】吾有事 特別純米(わがうじ)【山形県】

2022年12月03日
酒蛙酒蛙
山形県鶴岡市 奥羽自慢
山形県鶴岡市 奥羽自慢

【S蕎麦屋にて 全4回の①】

 S蕎麦屋は、かけそばが絶品なうえ、蕎麦屋にしては置いている酒の種類が多い。蕎麦好き&酒好きのわたくしとしては、こたえられないシチュエーション。「新しいお酒が入りましたよ。いらっしゃい」と連絡が来たので、すみやかに暖簾をくぐった。

 まず最初にいただいたのは「吾有事 特別純米」だった。この蔵のお酒は当連載でこれまで、3種類を取り上げている。今回のお酒はどうか。いただいてみる。

 最初のアタックは、甘旨酸っぱい味わいだった。この甘旨酸っぱさは、非常にジューシーでもある。そして瞬間的に辛みが来る。実に面白い展開だ。中盤から余韻まで、この辛みが続く。上立ち香は、ほのか。含み香はメロン的。微発泡感があり、フレッシュ。とろみ感があり、分厚い味、味が太い。濃醇。非常にしっかりとした味わいのお酒だった。モダンタイプのフルボディー寄り。しかし、フルボディー寄りといっても、くどさは無く、飲み飽きしない酒質。

 瓶のラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米使用)、原料米 酒造好適米100%使用、精米歩合60%、アルコール分15度、製造年月2022.8」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 蔵のツイッターは「蔵元の創業は亨保9年(1724年)。2012年より3年ぶりに酒造りを再開」と自己紹介している。蔵再開のいきさつについては、2012年12月14日付の荘内日報の記事に詳しい。記事のリード部分を以下に抜粋する。「2009年度を最後に仕込みをやめ休業していた清酒『奥羽自慢』の佐藤仁左衛門酒造場(鶴岡市上山添)が仕込みを再開し13日、今期初の搾り作業を行った。300年近い歴史を誇る蔵元だが、財政難などから廃業の方向にあった。『伝統の蔵元をなくしたくない』と楯の川酒造(酒田市山楯)が支援に乗り出し復活したもの」

 また、「吾有事」の由来とコンセプトについて、蔵のフェイスブックは以下のように説明している。

「吾有事 ― 多くの方にとって聞きなれない言葉かと思いますが、この言葉は、鎌倉時代の禅僧・道元禅師によって生み出されました。『自分の"存在"と"時間"が一体となる』。このような意味があります。難しいお言葉ですよね。それでは、このような経験はありませんか? 
 ― 何かに熱中しているとき、いつの間にか時間があっという間に過ぎてしまった。
これこそが『自分の"存在"と"時間"が一体となる』瞬間 - 自分と時間が溶け合っていること - ではないかと思うのです。そして、私たちにとって時間と一体になるほど熱中できる時間―それが酒造りです。『時間を忘れる程に熱く、酒造りを極めていきたい』。そんな想い込めて『吾有事』と命名いたしました」

 主銘柄名および蔵名の「奥羽自慢」の由来について、蔵のツイッターは「酒名の由来は『品質本位の酒造りで酒処東北においても自慢の酒を醸す』との酒造理念から命名されました」と説明している。

 荘内日報の記事にあるように、奥羽自慢は、楯の川酒造のグループ会社であり姉妹蔵の関係にある。両社とも佐藤淳平さんが代表を務めている。