成績振るわず自由契約 ラムズに移籍したQBベイカー・メイフィールド


オクラホマ大時代の2017年に、年間最優秀選手の「ハイズマントロフィー」を受賞し、翌年のドラフト全体1位指名でNFL入りしたQBベイカー・メイフィールドがこのほどパンサーズから自由契約となり、ラムズに移籍した。メイフィールドにとってはこの1年間で3チーム目となる。
メイフィールドは昨季まで彼をドラフト指名したブラウンズで先発QBを務めていたが、ブラウンズが今年の3月に前テキサンズのデショーン・ワトソンを獲得したため7月にパンサーズにトレードされていた。
パンサーズでは開幕スターターを勝ちとったが、1勝5敗と振るわず自由契約となっていた。
49ersやレーベンズ(ともに8勝4敗)が獲得する可能性が高いとの事前情報があったが、ウエーバー方式では手を上げた球団のうち勝率の低いチームに優先権がある。49ersとレーベンズにメイフィールド獲得の意思があったかどうかは不明だが、3勝9敗のラムズ入りが決まった。
メイフィールドは第14週のレイダーズ戦に先発出場し、17―16でチームに4勝目をもたらした。
49ersとレーベンズはともに地区首位でプレーオフ出場は確実だ。スーパーボウル出場への可能性があるチームでプレーしたい気持ちは当然あるだろうが、メイフィールドが今後も先発QBの立場にこだわるのであれば、ラムズは移籍先として必ずしも悪くはない。
ラムズはエースQBマシュー・スタッフォードが首のけがのため故障者リスト入りしており、チームにプレーオフの望みがない今となっては今季再びフィールドに立つ可能性は低い。
現在はバックアップQBのジョン・ウルフォードが先発を務め、ブライス・パーキンスが2番手となっているが、いずれも経験が浅く実績に乏しい。
スタッフォードは2026年までラムズとの契約が残っているが、34歳になってキャリア終盤に差し掛かっていることは否定しがたい。ラムズはそろそろ新たなエースQBが欲しいところだが、来年のドラフト1巡指名権はない。
そんな状況下でメイフィールドが残りの試合で結果を残すことができれば来季もラムズに残留し、うまくいけば先発の座を獲得できるかもしれない。そうなれば今回の移籍はラムズにとってもメイフィールドにとっても、まさに「ウィンウィン」のディール(取り引き)と言える。
ブラウンズではチームを18年ぶりのプレーオフ出場(2020年シーズン)に導いた実績のあるメイフィールドだが、QBとしての評価は必ずしも高くない。パフォーマンスに安定感がなく、コンスタントに試合で勝つことができないからだ。パンサーズでの成績は残念ながらそれを裏付けるものになってしまった。
その評価を覆すことができるとすれば、QB育成に定評のあるラムズのショーン・マクベイHCの手腕だろう。

カーク・カズンズ(現バイキングズ)をNFLトップクラスのパサーに育て、ジャレッド・ゴフ、スタッフォードを擁してスーパーボウルに出場したマクベイHCが、メイフィールドを再生することができるのか。来季以降のラムズを占う上でも注目したいポイントだ。

生沢 浩( いけざわ・ひろし)プロフィル
1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。
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