【編集後記】Vol.417=「黄色い三日月」

2022年12月01日
共同通信共同通信
宍戸 博昭 ししど・ひろあき
関学大―立命大が行われた万博記念競技場の空に浮かぶ三日月=11月27日
関学大―立命大が行われた万博記念競技場の空に浮かぶ三日月=11月27日、大阪府吹田市

 

 関学大と立命大が関西学生リーグでのライバル関係として注目されはじめたのは、1990年代からだ。

 それまで王者・関学大としのぎを削っていた京大が低迷、代わって立命大が台頭した。以後、両校は毎年ファンを魅了する激闘を繰り広げている。

 11月27日、大阪・万博記念競技場で行われた「関立戦」も、見どころの多い試合だった。

 全勝での単独優勝を目指す「ファイターズ」、一方の「パンサーズ」は既に関大に敗れていて、さらにこの一戦を落とすとシーズンエンドという状況でキックオフを迎えた。

 序盤はお互いに決め手がなく、第2クオーターに関学大が先制した。7―0。その後、立命大は第4ダウンからパントを蹴らずギャンブルに出たが、意表を突くパスは失敗した。

 引き分けではなく勝たなければいけない立命大だが「まだ前半で7点差。この場面でなぜ?」と思った。

 両チームの守備陣が好調で、関学大が2インターセプト、立命大は1インターセプト、1ファンブルリカバーを記録した。

 これはミスというより、守備選手のボールへの執念がもたらしたターンオーバーで、レベルの高い両校の対戦ならではの攻守交代だった。

 アメリカンフットボールは12分クオーターの場合、1チームのプレー数は50から60と言われている。その中で最善のプレーコールをするのは難しい。

 コーチ陣の意図とフィールドにいる選手のパフォーマンスが合致すればいいが、なかなかそうはうまくいかない。

 関学大が得点圏で2本のFGを失敗したことも試合が拮抗した一因だが、緊張感が漂う大一番で選手を責めるのは酷である。

 獲得ヤードは関学大の245ヤードに対し、立命大は246ヤード。反則は関学大が5回で立命大は1回だった。

 結果は関学大が10―6で競り勝ったが、全力を尽くしうずくまる選手が続出した立命大の健闘は称賛に値する。

関学大に敗れ、チームメートに話しかける立命大のLB坪倉拓未主将=11月27日、万博記念競技場
関学大に敗れ、チームメートに話しかける立命大のLB坪倉拓未主将(47)=11月27日、万博記念競技場

 

 試合後のハドル。流れを変えるファンブルリカバーをした立命大のLB坪倉拓未主将は、3年生以下のチームメートを前に涙を流して自らの力不足を侘び「お前らならきっとできる」と後を託した。

 取材する側も疲労を感じる緊迫した好ゲームの余韻に浸りながら、競技場の外に出た。見上げた空には、黄色い三日月がくっきりと浮かんでいた。(編集長・宍戸博昭)

 

 
 

宍戸 博昭 (ししど・ひろあき)プロフィル
1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を30年以上務めている。