華麗なステップでタックルかわす逸材 関学大1年生QB星野秀太


関学大の1年生QB星野秀太。173センチ、75キロの体がフィールドに立つと大きく見える。
味方のレシーバーがマークされているとみれば、迷わずスクランブル発進。この判断の早さが星野の持ち味である。
11月27日。大阪・万博記念競技場で行われた関西学生リーグの最終節で、関学大は立命大とのライバル対決に星野を先発出場させた。
単独優勝が懸かる大一番。開幕戦の甲南大戦でもスターターに起用された19歳の司令塔は臆することなく、冷静に「ファイターズ」のオフェンスをリードした。

憧れの選手は、抜群のランニングアビリティーを誇るNFLレーベンズのQBラマー・ジャクソンという星野は、試合開始直後のプレーで自らボールを持って6ヤードをゲインした。
40ヤード走4秒8は、特筆すべき数字ではないが、スピードとパワーに優れた立命大守備選手のタックルを、華麗なステップと独特の間合いでかわすテクニックは天性のものだ。
第2クオーター8分41秒。星野は副将の4年生WR糸川幹人にゴール前1ヤードから先制のTDパスをヒットする。関大に敗れ1敗を喫し、この試合に勝つしか同率優勝の目がない立命大から貴重な先制点を奪った。
この場面を星野は「OLのパスプロテクションがよかったので糸川さんへのパスが決まった」と振り返った。試合は関学大が10―6で接戦を制した。

初めて経験するレベルの高い「パンサーズ」との一戦。7回でチーム一の51ヤードを走った星野は「他のチームとは気迫が違った」と、これまでになかった圧力を感じたようだ。
「小さい頃から関学に行きたかった。ライスボウルで見たファイターズは熱く、ここで日本一になりたいと決めていた。関東の大学への進学は、全く考えなかった」
千葉県四街道市出身。近年関東で常に上位にいる東京の足立学園高に進む。小柄だがバランスの取れたプレースタイルは、関係者から高い評価を受けていた。
「フットボール以外の、人としての在り方が大切。私生活がしっかりしていないと、いくら選手として優秀でも駄目だと厳しく指導を受けた」
星野は、恩師である足立学園高・高濱陽一監督の教えを大事にしているという。
高濱監督自身はアメリカンフットボールのプレー経験はないが、実績のあるコーチに教えを請い、国内外の文献を読みあさるなど猛勉強してチームを東京の強豪に育て上げた苦労人である。
高濱監督の星野評はこうだ。
「明るくて礼儀正しいいい子。関学へのスポーツ推薦が決まった後も、授業を真面目に受けて、教員から信頼されていた。主張ははっきりするタイプ。1年次からリーダーシップを発揮して、先輩にもものを言う生徒だった」
ベンチプレスは105キロでスクワットは170キロ。星野は「もっと体を大きくしたい。当たってもけがをしないのが一番。あと3年で体作りをしたい」という。

大学の近くに下宿し自炊もするという。「関西の食事は美味しい。粉物は子どもの時から好きなので」
「まだまだ全然駄目です…」と苦笑いする関西弁の上達もまた、今の星野にとっては大切なミッションなのかもしれない。

宍戸 博昭 (ししど・ひろあき)プロフィル
1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を30年以上務めている。
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