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子どものいま未来

いじめ、不登校、虐待や貧困。子どもたちをめぐり山積する課題に、教育や福祉の最前線で取り組む専門家・支援組織の活動を追う

(13)子どもアイディアコンテスト 夢を持ち夢を形に 挑戦して成長する  ものづくりの喜び 

2018.1.17 16:05

 子どもたちに夢を持ってほしい。その夢を形にする「ものづくり」に挑戦し、夢を実現する喜びを知ってほしい。そんな思いからホンダが始めた「子どもアイディアコンテスト」は、毎年開催され、13回を数える。最終審査会が昨年11月、東京のHondaウエルカムプラザ青山であり、友達や家族、未来への思いが詰まった作品が並んだ。

脳症の妹と遊びたくてつくった「ひまわりがたバッジ」を操作する尾関伶香さん
脳症の妹と遊びたくてつくった「ひまわりがたバッジ」を操作する尾関伶香さん

 最初にステージで発表したのは名古屋市立千種小1年、尾関伶香(れいか)さん。「ひまわりがた だれでもうごけるバッジ」は「妹が脳症で寝たきりなので、他の子みたいに一緒に遊べるようになるといいなと、いつも思っているので作りました」。

 胸のバッジと頭をつなぐと、相手の話が聞こえ、思ったことを話せて、手足も動かせる。妹の写真と立体模型で説明、審査員特別賞を受けた。

 私の作品

 コンテストは「未来にあったらいいな」というアイデアを考えることから始まる。アイデアを絵にし、思い付いたきっかけやアピールポイントも書き、応募する。今回は 約3400 の応募作品から小学校低学年の部で16、高学年の部12の計28作品が最終審査会に選ばれた。最終に残ると、家族の助言や協力も得て立体作品を作る。

 「アイデアを考え、形にしていく過程で、子どもたちは大きく成長する」とコンテストを担当するホンダ社会活動推進室の 斎藤紀恵(きえ)さん。

 立体作品作りのリポート「チャレンジシート」を見ると、苦労の連続だ。まず設計図を書くが、想定通りにいかない。粘土が乾いてひび割れたり、可動部分を作るのが困難を極めたり。「寝ても起きても考えていた」と書いた子もいる。

 時には家族と意見が対立する。ドームは半分にした方が(中の)作ったものが見えていいと言う母親に、全体にかぶせるようにしたいと子どもが主張し「私の作品なので、私の意見が通った」。壁にぶつかり、挑戦を繰り返し、完成させる。

 助けたい

「ミミズはにょろにょろして気持ち悪いと言われますが、実はすごいパワーの持ち主です」と発表する稲田章剛君
「ミミズはにょろにょろして気持ち悪いと言われますが、実はすごいパワーの持ち主です」と発表する稲田章剛君

 低学年の最優秀賞は長崎県島原市立湯江小2年、稲田章剛(しょうごう)君の「ミミズ屋さんたがやし号」。作物が育たない土地に飛び、ミミズの力で緑の大地に変える。高学年は仙台市立榴岡小5年の伊藤智哉 (ともや)君「チームしなせ 9 (ナイン) 」。子どもの自殺をなくすため、特別な救助車に乗った9人が協力して助け、生きる力を取り戻させる。助けられる子を「 心折太 (こころおれた) 」、胸のうちを聴く人を「 悩聴代 (なやみきくよ) 」と、ネーミングも楽しい。

 他にも、福島県から避難してきた友達のために考えた「放射能バキュームクリーナー」、振り込め詐欺を防ぐ「ATMロボポリス」、地雷除去ロボットなど、誰かを助けたいという作品が多い。

 参加者の親からは「子どもに主体性が出てきた」「チャレンジ精神につながっている」といった感想が寄せられている。

 「ひまわりがたバッジ」の尾関さんの親は「脳症の妹の生きる証しになった」と喜んだという。

 

制約なしに考える楽しさ 家族団結し失敗乗り越える 

 科学の発達によって夢の多くが実現し、子どもが夢を持つことは難しくなったのではないか。夢と学校教育は、うまくつながるのか。コンテストを担当する斎藤紀恵さんに聞いた。

出場者にインタビューする斎藤紀恵さん
出場者にインタビューする斎藤紀恵さん

 

 「夢を持ちにくくなっているという面は確かにあると思います。子どもたちは学校でも現実をベースにして学ぶことが多い。現実の中で課題を見つけ、解決を考える。でも、このコンテストでは実現性抜きに、制約なしに考える。自由に夢を考えるのは楽しいと子どもたちは感じ、考え始めるとどんどん浮かんでくると話す子や、自分の頭からこんなにもアイデアが出てくるので驚いたという子もいます」

 「先生からは、学校も自由な発想を大事にしたいけれど、そういう部分は拾ってやれない。このコンテストではできるとの評価ももらっています」

 周囲の大人にはどんな影響があるのか。

 「家族がコミュニケーションできたとか、団結できたとか、それぞれに家族のドラマがあります。立体作品にするのは難しくて失敗したり、挫折しかけたり。それを家族みんなで乗り越えたという感想もありました」

 「最終審査への絞り込みはホンダ各部門の計60人でやります。『夢の実現というホンダの原点を感じた』『夢の大切さに気付かされた』と、良い刺激になっています」

 最終審査作品で斎藤さんが好きなのは「ちょこっと勇気くれマシーン」。アイデアのきっかけは「おじいちゃんが突然亡くなり、その時、もっといっぱい『大好きやで』と伝えていればよかったと悔しい思いをしたこと」。大切な人に素直な気持ちを伝えたいという小6男子の作品だ。

第13回子どもアイディアコンテスト受賞者
第13回子どもアイディアコンテスト受賞者

「メモ」主体的学習の手本

 「子どもアイディアコンテスト」をアクティブ・ラーニングのお手本と評する教育関係者もいる。講義のように先生が一方的に教え込むのでなく、子どもが主体的に学ぶ学習や授業方法を指す。知識の習得にとどまらず、探究力や思考力、判断力や表現力を培うのに有効とされる。このコンテストは、アイデアや立体作品作りの段階で主体的な探究が求められ、プレゼンテーション(発表)では表現力も必要となる。

「記者ノート」科学のあり方  

 科学技術は何をもたらしたのか。手を汚さない大量殺りくを可能にした軍事技術。いったん事故を起こせば取り返しのつかない汚染が広がる原発。携帯電話は24時間、人を拘束し、コンピューター技術は情報を際限なく増やし続け、人をせかす。

 だが、コンテストで子どもたちの発表を見て、こんな科学技術もあり得るんだと気付かされた。例えば、汚染された水も空気も土も吸い込んで浄化する「放射能バキュームクリーナー」。科学者が総力を挙げて取り組んでもいいのではないか。(共同通信編集委員・佐々木央)=2015年11月取材 

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