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伝統の旅館を拠点ににぎわいを 地域挙げて寺子屋も開催 「松原宿活性化協議会」(長崎県大村市、第7回優秀賞)

2019.3.26 16:23

 「これ、なあに」。女の子たちの明るい声が響く。長崎県大村市松原地区にある木造2階建ての旧松屋旅館。2月から4月にかけて、赤じゅうたんのひな壇に約600体のさまざまなひな人形が飾られる。静かな集落の中で、この一角には華やかな雰囲気が漂っている。

 

 旧松屋旅館に飾った、さまざまなひな人形を見る伊東正人・松原宿活性化協議会事務局長と子どもたち=2019年3月、長崎県大村市
 旧松屋旅館に飾った、さまざまなひな人形を見る伊東正人・松原宿活性化協議会事務局長(左端)と子どもたち=2019年3月、長崎県大村市

 ▽風情ある建物を拠点に

 大村市郊外にある松原地区は江戸時代、長崎から北九州に続く長崎街道沿いの宿場町として栄えた。その後も鉄道の駅がいち早く置かれるなど、地域の中心地として賑わいは続いた。1960年代ごろは約640㍍の通りの周辺に70余りの商店が軒を並べ、多くの買い物客らが訪れたという。
 しかし、近隣への大型店舗の出店などの影響で、次第に商店は減少。こうした動きにあわせるように、地域の人口も減少に転じていった。
 地域の人たちが賑わいを取り戻そうと、立ち上がったきっかけは、旧松屋旅館の解体計画だった。江戸時代、長崎街道を行き来する旅人を泊め、70年ごろまで営業を続けていた旧旅館は風情ある木造の建物で、地域の歴史を伝える存在。地元から上がった惜しむ声を受け、所有者は改修して保存することを決めた。

 

 静かな通りに面し、木造の建物ならではの風情が漂う旧松屋旅館=2019年3月、長崎県大村市
 静かな通りに面し、木造の建物ならではの風情が漂う旧松屋旅館=2019年3月、長崎県大村市

 

 この決断に、今度は地域が動いた。2004年、地元住民ら約50人が参加して「松原宿活性化協議会」を結成。旧旅館を地域づくりの拠点として借り受け、知恵を集めて取り組みが始まった。


 ▽大学とも連携し多彩なメニュー

 活動の中心は、旧松屋旅館を活用したイベントだ。とりわけ、毎年8月に開く寺子屋塾は、地域へ活気が広がる。木造の旧旅館を寺子屋に見立てて子どもが集まったら、地域も楽しくなるはずとの思いを込め、協議会の結成当初から始めた。
 小学生を対象に、5日間にわたって行うメニューは多彩だ。当初は退職した教員らによる教科の補習が中心だったが「学校で教えないことをやろう」と、住民が先生となって郷土料理やお茶や書道、昔の遊びを教えるなど、さまざまな分野に拡大。教員を目指す長崎大学の学生がボランティアとして参加したり、東京の美術大学の教員らが絵画などの教室を開いたりと、地域の外にもつながりが広がってきた。

 

 毎年8月に行う寺子屋塾では、書道など多彩なメニューを実施。子どもたちの明るい声が響く=2018年8月、長崎県大村市(松原宿活性化協議会提供)
 毎年8月に行う寺子屋塾では、書道など多彩なメニューを実施。子どもたちの明るい声が響く=2018年8月、長崎県大村市(松原宿活性化協議会提供)

 

 メンバーは毎年5月ごろから、話し合いを重ねて企画を練る。自身の子どもも通ったという村川一恵会長は「子どもたちから、今年はいつから始まるのと聞かれる」といい、地域に定着してきた手応えを話す。約80人の子どもたちが通う期間中は、明るい声があちこちに上がっている。


 ▽新たな芽も生まれる

 ひな祭りの展示のほか、11月には地元の祭りにあわせた出店やコンサートなど、季節ごとにイベントを続ける。美術展や講演会も重ねてきた。週末には、旧松屋旅館を公開し見学も受け入れている。こうした積み重ねで、年間約4千人が訪れるようになった。

 

 ずらりと並んだひな人形に囲まれて話す村川一恵会長(右端)ら松原宿活性化協議会のメンバー=2019年3月、長崎県大村市
 ずらりと並んだひな人形に囲まれて話す村川一恵会長(右端)ら松原宿活性化協議会のメンバー=2019年3月、長崎県大村市

 地区の空き家を活用しようと、お試し移住向けに貸し出したり、旅館への改装を計画したりする動きも出てきた。地域に生まれた変化は「活動を続けてきた成果だと思う」と、村川会長はみる。伊東正人事務局長も「身の丈にあった取り組みが大事」と話し、息長く進める構えだ。(共同通信 伊藤祐三)

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