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地域再生ただいま活動中!

地方新聞社と共同通信社が設けた「地域再生大賞」の表彰団体は、18年度の第9回までに計450団体に達した。それぞれの課題に向き合い、それぞれの地で活動を続けている表彰団体の今を紹介する。

若者が切り開くホームレス支援 「Homedoor」(大阪市、第3回優秀賞)

2018.12.30 7:00

 経済誌フォーブス日本版「世界を変える日本の30歳未満の30人」や女性向けビジネス誌・日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるなど2018年も卓越した行動力と経営センスが注目された認定NPO法人「Homedoor」(ホームドア)理事長の川口加奈さん(27)。14歳でホームレスの支援活動を始め、大阪市立大経済学部在学中の19歳で団体を設立、大企業を巻き込みながら、シェアサイクルと就労支援を結びつけたユニークなアイデアで、1500人以上を支援してきた。

Homedoor理事長の川口加奈さん(右)。団体名は、相談者の心のよりどころとなり、人生からの〝転落防止柵〟の役割を果たすことを目指して名付けた(大阪市北区)
Homedoor理事長の川口加奈さん(右)。団体名は、相談者の心のよりどころとなり、人生からの〝転落防止柵〟の役割を果たすことを目指して名付けた(大阪市北区)

 

 ▽支援の受け手から地域の課題解決の担い手へ
 当事者の男性を川口さんは親しみを込めて「おっちゃん」と呼ぶ。「おっちゃんたちが路上生活から脱出できる選択肢をたくさんつくりたい」。ニーズをリサーチしようと大阪の日雇い労働者の街・釜ケ崎で仲間の学生2人とモーニング喫茶を運営する内に、多くの人が自転車修理を得意とすることに気付いた。現金の収入源となる空き缶集めに自転車を使い、壊れても自分で修理する内に技術が向上するという。本人の得意分野を仕事にした上で、大阪名物と揶揄される放置自転車問題を解決する担い手になってもらおうと2012年から始めた事業が「HUBchari(ハブチャリ)」だ。

 当時はシェアサイクルが浸透しておらず、貸出・返却ポートのスペースを提供してもらおうと行政や企業数百社を回ったが「学生で実績もない」と門前払いされた。ならばと一週間限定の社会実験として提案し、NPO法人格も取得。生活雑貨店「梅田ロフト」が期間限定で採用したのをきっかけに常設化も進み、17年からはドコモ・バイクシェアとも組んでオフィスビルやホテル、百貨店「大丸心斎橋店」の軒先など常設ポートを52カ所にまで増やした。

 ポートではHomedoorに雇用されたおっちゃんたちがパンク修理や掃除、受付業務をこなし、外国人旅行者には英語を交えながら対応する。「生活が安定するようになった」と皆表情は明るい。経歴の空白期間が埋まることで採用されやすくなり、半年ほどで次の就職先が見つかるという。釜ケ崎地区での街歩きを通じて貧困問題を正しく伝える啓発活動や講演を通じて、企業にも協力の輪が広がり、寄贈されたリユース機器を使ってのパソコン教室やリサイクル用品を活用した引っ越し支援にも取り組む。活動を支える企業・団体は「大阪ガス」や、アウトドア用品大手「モンベル」、総合リサイクル「ベストバイ」など40法人に上る。

自然に人の輪ができる大阪市北区のHomedoor事務所。ボランティアの登録者は750人に上る。
自然に人の輪ができる大阪市北区のHomedoor事務所。ボランティアの登録者は750人に上る。

 

 ▽観光や災害対応でも貢献
 初年度で年間6千件だった貸出件数も18年は「ひと月で2千件超え」の勢いで伸び、うち約6割が訪日外国人旅行者。大阪北部地震ではポートの一部で貸し出しを無料とし、帰宅困難者支援の役割も担った。「大阪環状線内で、500メートルおきにポートがあれば公共交通機関としての役割を果たせる」。将来は120カ所まで増やすのが目標だ。「住民や観光客にとって必要で便利だから利用しているサービスがいつのまにか問題解決につながっていた、そうした切り口が好き」と川口さん。その担い手が〝おっちゃん〟たちと気付いたときに「偏見が解ける瞬間が訪れるのではないか」と信じている。 

 ▽「見えないホームレス」にも対応
  手づくりの弁当を届ける夜回り活動など支援メニューは多岐にわたり、バージョンアップも欠かさない。相談ボランティアは全5回の講座と試験を経て育成し、支援を通じて路上生活を脱出できた男性20人も加わる。「おっちゃんたちは人生相談も上手。雇う、雇われる、という関係ではなく、パートナーとして関係を構築したい」。インターネットカフェで夜を過ごす「見えないホームレス」が若年層で増える実態にも対応。全国の深夜営業店舗でバナー広告やポスターを出して相談を促すほか、17年からは電通などが主導するプロジェクトと連携して、ネット検索画面に表示される「リスティング広告」を出稿したところ、17年度の相談者が前年度比1.7倍の289件と大幅に増えた。

 ▽シェルターも開設、地域住民との交流拠点化目指す
 電車通学の途中、車窓から見えた釜ケ崎の光景をきっかけにホームレス問題に関心を持った川口さん。「関心を持った以上、行動せずにはいられなかった」。18年は5階建てのビルを借り、短期から長期まで安心して個室に滞在できる「アンドセンター」の開設にこぎつけ、中学時代から思い描いていた構想をまたひとつ実現させた。毎月約100万円かかる固定費が壁だったが、クラウドファンディングを活用、地域住民と交流できるカフェや食堂の併設も目指す。「ツールはそろいつつある。制度の隙間で、支援が届かない人にも必要な選択肢を提示できる拠点にしたい」。何度でもやり直せる社会の実現に向けて、タフでしなやかな挑戦は続く(共同通信 錦織綾恵)

2018年に開設した「アンドセンター」の個室。運営経費を賄うため、Homedoorのホームページで寄付を呼び掛けている。
2018年に開設した「アンドセンター」の個室。運営経費を賄うため、Homedoorのホームページで寄付を呼び掛けている。

 

 

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