【5037】三戸のどんべり 家傳田舎仕込み 純米(さんのへ)【青森県】


【B居酒屋にて 全6回の⑥完】
酒友から「今さら聞けない日本酒講座の個人授業をしてほしい」と頼まれ、B居酒屋へ。日本酒歴が長い酒友だが、生酛とは? 山廃とは? 酒母とは? など知っているようで説明するとなるとできない言葉が多い、という。もどかしい酒友の気持ちはよく分かる。ということで、喜んで引き受けることにした。個人授業といってももちろんワリカンだ。
「よこやま」「あべ」「白岳仙」「ヤマサン正宗」「冨玲」と冷酒で飲み進める。そして、「冨玲」の燗酒、「じょっぱり 純米」(当連載【3688】)の燗酒、「初桜 ニューハツサクラ 生酛太郎 純米 火入 玉栄」(当連載【4932】)の燗酒を飲んだところで酒友は帰る。
一人残ったわたくしは、仕上げに「三戸のどんべり 家傳田舎仕込み 純米」をいただく。このお酒は八戸酒類がつくっているもので、この蔵のお酒は当連載でこれまで、「八鶴」「如空」を合わせて5種類を取り上げている。
さて、この酒はにごり酒だ。グラスに注いだ仲居さんは「牛乳みたい」。さて、いただいてみる。
上品な香りがほのか。口当たりは濃厚でクリーミー、滑らか。味わいは、甘みと旨みが良く出ており、酸は奥の奥にすこしいる。中盤から余韻は、やや辛み。クセ無く実に旨い。濃厚でクリーミーだが、キレが良い。これだけでも十分美味しいが、個人的には、もうすこし酸が出ていれば、なお良かった。クラシックタイプ。もしくは醇酒。
蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。
「今や冬の代名詞となりつつある商品です。甘く濃醇な口当たりですが、お米から出た甘さだけなので、喉越しはスッキリとしています。ネーミングの妙からも人気のある商品です。完全受注品のため発売からすぐに品薄になるほどの人気シリーズです」
ホームページのスペック表示は「使用米 青森県産米、精米歩合 65%、アルコール度数 15度、日本酒度 -25.0、酸度 1.6、おいしい飲み方 ロック◯ 冷酒◎ 常温◎ 燗△」。
また、ラベルのスペック表示は「アルコール分15度、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合65%、製造年月22.11」
酒名「三戸のどんべり」(「どんぺり」に非ず)の名の由来について、三戸町の酒販店豊川酒店のホームページは以下のように説明している。
「三戸のどんべり(ドンベリ)はシャンパンで有名な銘柄ドンペリニョン(シャンパンをつくった僧侶の名前)が略された『ドンペリ』にもじられて命名されました」。しかし、蔵のある八戸ではなく、なぜ隣町の三戸なのだろうか。もしかしてローカリティーを強調するため隣町の名を使ったのだろうか。
また、わたくしは、シャンパンのドンペリの印象が強かったので、「三戸のDONPERI」と読んだが、よく見たら「三戸のDONBERI」ではないか。妙な訛具合に笑ってしまった。
酒名「八鶴」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。
「江戸時代に八戸藩を治めていた南部氏の家紋『向かい鶴』と、八戸の地名『八』を掛け合わせ『八鶴』と命名されました。また、現在も使われている漢字の『八鶴』の文字は、日本画の巨匠であり大の酒好きとして有名な、横山大観の筆によるもので、『飲んだこともない酒の字を書けとは、見たことのない風景を描くがごとし』と言われ筆書き料として清酒4斗樽を送ったと伝わっています」