【4971】光栄菊 幾望 無濾過生原酒(こうえいぎく きぼう)【佐賀県】

2022年11月30日
酒蛙酒蛙
佐賀県小城市 光栄菊酒造
佐賀県小城市 光栄菊酒造

【B居酒屋にて 全7回の⑤】

 B居酒屋は「全国の地酒200種類を常時置いています」がウリだ。1カ月に1回のペースで店を訪れると、日本酒のラインナップはだいぶ変わっているので、当連載「日本酒津々浦々」の取材に好都合なのだ。今回は、当連載でまだ取り上げたことがないお酒7種類をいただいた。

「郷宝」「菊姫」「旭興」「宮泉」に続いていただいたのは「光栄菊 幾望 無濾過生原酒」だった。

「光栄菊」は、当連載でこれまで5種類を取り上げている。光栄菊酒造は、新しくできた酒蔵で、そのいきさつについて、佐賀新聞のウェブサイトが2019年12月2日付で詳しく書いているので、以下に転載する。

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 150年の歴史を刻み、2006年に廃業した佐賀県小城市三日月町の光栄菊酒造が新しい経営者の下で再出発した。香川県出身の男性が建物と蔵の名前を引き継いで新会社を設立。8月末の豪雨災害も乗り越え、創業にこぎ着けた。今年は2種類の日本酒を製造し、かつて地域に親しまれてきた「光栄菊」の銘柄で、12月下旬の出荷を目指す。
 東京でテレビ番組の制作を手掛けてきた日下(くさか)智(さとし)さん(53)が酒蔵跡を購入し、昨年12月に会社を立ち上げた。制作した番組は経済や農業分野が多く、輸出が堅調で潜在需要が見込まれる日本酒の伸びしろを感じて独立を決めた。
 佐賀県内の建築家から物件を紹介してもらい、傷みがひどかった屋根は全て張り替えた。貯蔵タンクや絞り器などの設備を一からそろえ、冷蔵施設も新たに設けた。8月末の豪雨でこうじ菌を繁殖させる「こうじ室」が浸水し、大幅な改修を迫られたが、佐賀銀行などから融資を受けて酒造りの環境を整えた。
 元NHK職員で知人の田下裕也さん(38)と2人で創業し、大阪や愛知の酒蔵で経験を積んだ杜氏(とうじ)の山本克明さん(42)が酒造りを担う。山本さんの日本酒は酸味とうまみがあり、切れ味のよい口当たりが特徴という。
 従来の光栄菊酒造は1871(明治4)年、現在の佐賀市富士町で創業した。北山ダムの建設に伴い、1952年に現在の場所にあった蔵を買い取って営業を続けてきたが、需要の低迷などで20年ほど前に酒造りをやめ、06年に廃業した。
 建物の一部を使って漬物の製造を始め、5代続いた蔵を維持してきた合瀬健一さん(67)は「ここで酒を造りたいという人が現れるとは思いもしなかった。最高の形で蔵が生き返った」と喜ぶ。
 年末の最需要期に向けて仕込みは本格化し、今年は一升瓶換算で約4600本の製造を目指す。日下社長は、会社の設立時から助言をもらい、温かく迎えてくれたという県内の同業者に感謝し「地域の活性化に貢献する意気込みを持って、皆さんに喜ばれる日本酒を届けたい」と話す。

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 杜氏の山本克明さんは、「菊鷹」(愛知県稲沢市)の名を高めた名杜氏として知られる。甘旨酸っぱい濃醇フルボディー酒の「菊鷹」は、わたくしの大好きな銘柄の一つ。この味をつくった杜氏が新天地に移籍したとは。かなりの驚きだった。さて、今回のお酒をいただいてみる。

 甘旨酸っぱいジューシーな味わい。これが第一印象だった。舌先にすこし微発泡を感じる。含み香が独特。「なんだろな、この甘やかな香りは。桃かな」と言ったら、店長は「熟した果実香。マルメロかな」。わたくしは「なるほど。そうかも。熟しているね」。甘・旨・酸の中でも甘みがとくに良く出ている。旨みもふくらむ。濃醇。分厚い酒質。これは旨い。モダンタイプのフルボディーか。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、アルコール分14度、2021年度醸造、製造年月2022.5」にとどまり、特定名称の区分、使用米の品種、精米歩合がいずれも非開示なのは残念だ。食品表示が細かく開示されている時代の流れにあって、消費者(飲み手)のために、これらの開示をお願いしたい。

 酒名「幾望」の意味は、コトバンクによると「満月に近い夜。また、その夜の月」とのこと。