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受験生の“パワースポット”!?

2017.12.15 11:00
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(上)湘南モノレールで「合格祈願 受験生応援キャンペーン」が開幕した11月26日、大船駅で開かれた式典で祈祷する様子、(下)湘南モノレールの「合格祈願サクラサクトレイン」の前に立つ尾渡英生社長(右端)ら=11月26日、大船駅
(上)湘南モノレールで「合格祈願 受験生応援キャンペーン」が開幕した11月26日、大船駅で開かれた式典で祈祷する様子、(下)湘南モノレールの「合格祈願サクラサクトレイン」の前に立つ尾渡英生社長(右端)ら=11月26日、大船駅

 入学試験シーズンの本番を控え、受験生の支えとなる“パワースポット”はどこか!? 私が足を運んでそう確信した(個人的感想です)のが、神奈川県の大船―湘南江の島(6・6キロ)を最短14分で結ぶ懸垂式モノレール、湘南モノレールだ。

 受験生の志望校合格を願って「合格祈願 受験生応援キャンペーン」が11月26日に幕を開け、大船駅で開かれた式典では日本三大弁天の一つ、江島(えのしま)神社の神職が祈祷して「サクラ咲く卯月(4月)には喜びの笑みあふるる沿線とならしめたまえ」と願いを込めた。

 2018年3月4日までの期間中に、現行車両5000系のうち1編成に特製ヘッドマークを取り付けた「合格祈願サクラサクトレイン」として走らせ、途中駅の片瀬山(かたせやま)駅は験を担いで副駅名称を「勝たせ山」と命名。

 受験生らがお参りできる「合格祈願神社」を大船駅に設け、「ご神体」は何と昨年6月に引退した500形のレール走行に使う台車と車体を結んでいたボルトだ。なぜボルトかと言うと、ぶら下がっているモノレールが1度も落ちることなく「安心安全な運行を27年間支えてきた」(湘南モノレール)ためとか。お後がよろしいようで。

 それらの熱烈な応援キャンペーンにも増して受験生を勇気づけるのが、湘南モノレールが2015年に親会社が変わり、大手商社の双日グループから転じた尾渡英生社長を迎えて新たな進路で経営改善が進んできたという着実な“成績上昇”だ。

 丘陵地を駆け抜けて起伏に富み、カーブも多い線形を最高時速75キロで駆け抜ける湘南モノレールは、三菱重工業、三菱電機、三菱商事という日本の代表的な企業が大株主として支え、「沿線にある三菱電機鎌倉製作所に通勤する従業員の足と、モノレールの車両などを製造する三菱重工の技術力を示すショールームの役割を担っていた」(関係者)という。

 しかし、「親方日の丸」ならぬ「親方スリーダイヤ」に支えられていた副作用として、ぬるま湯の企業体質に陥った。輸送人員は1993年度の約1130万人をピークに減少傾向をたどり、2011年度に約940万人まで落ち込んだ後は持ち直したものの「年間1千万人程度を確保できればいいという守りの姿勢だった」(社内筋)という。

 ところが、東北地方と関東のバス会社などを傘下に抱える「みちのりホールディングス」(東京)が三菱グループなどの保有株式を買い取り、全額出資子会社化すると新たな利用客獲得に積極策を講じる“野武士集団”へと変貌を遂げてきた。

 企業風土改革の指揮を執ってきたのが15年10月に就いた尾渡社長だが、人材紹介会社に打診された時点では何と「神奈川県に以前住んでいたが、湘南モノレールを知らなかった」という「未知との遭遇」からのスタートだった。

 外部出身者ならではの視点が強みを発揮したのが「東京に通うサラリーマンが大勢いる地域なのに平日午後9時台で15分間隔だけの運転になるのは絶対にあり得ない」と一念発起し、昨年6月に踏み切った実に23年ぶりのダイヤ改正だ。特色である朝からの7分30秒間隔のダイヤを平日夜で午後11時台まで3時間延長し、午後9~11時台の本数を倍増。休日も、7分30秒間隔のダイヤを朝と夜に計4時間延ばした。

 気になる“成績”について、尾渡社長はこう胸を張る。「競合する路線バスなどを利用していた顧客が流れ込み、今年5月末までの1年間で定期券の販売が、前の1年間より3・4%伸び、今年6月以降も前年より2~3%増と増加傾向が続いている」

 さらに、沿線外から訪れる観光客を広げるために四季折々のイベントに積極的に取り組み、受験生応援キャンペーンならば「受験生や家族に寄ってもらい、江の島や鎌倉への初詣にモノレールを利用してもらう動機づけをしてもらえればいい」との思惑がある。急増する訪日外国人旅行者の獲得も強化するため、ホームページを昨年4月から多言語化して今や英語や中国語にとどまらず、タイ語、インドネシア語、韓国語にも対応する。

 そんな営業努力が実を結んで2016年度の輸送人員は1050万人に回復し、17年度も「1060万~1070万人に増えるだろう」との見通しだ。20年東京五輪・パラリンピックでは江の島がセーリング競技会場となり、その前にはセーリングのワールドカップ(W杯)という追い風、それも神風と呼ぶべき猛プッシュを受けるだけに尾渡社長は「年間輸送人員でピークの1130万人を追い抜きたい」と鼻息が荒い。

(上)湘南深沢駅近くを駆ける湘南モノレールの「合格祈願サクラサクトレイン」=11月26日、(下)バリアフリー化のために大規模改装し、現在の姿とは一変する湘南江の島駅舎=11月26日
(上)湘南深沢駅近くを駆ける湘南モノレールの「合格祈願サクラサクトレイン」=11月26日、(下)バリアフリー化のために大規模改装し、現在の姿とは一変する湘南江の島駅舎=11月26日

 目標実現に向けた対策も怠らず、受け入れ態勢を整えるためにインフラを改善する勝負の年となるのが18年だ。「Suica(スイカ)」などの集積回路(IC)カードに対応させ、湘南江の島駅をバリアフリー化するために大規模改良して1本のエスカレーターで建物の5階にあるプラットホームにたどり着ける構造に変える。

 新しい進路で成績がめきめきと上昇し、掲げたさらに高い目標に向けて弱点を次々と克服する姿はまるで受験生の模範のようだ。そんな“パワースポット”の様相を呈する湘南モノレールの合格祈願を追い風に、受験生には1本のレールを邁進するモノレールのように志望校合格へ一直線に進んでほしい。

 ☆大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)共同通信社経済部次長。懸垂式のうちサファージュ式モノレールを日本で走らせているのは湘南モノレールと千葉県の千葉都市モノレール(千葉県)の2社だけで、うち湘南モノレールは1両多い3両編成のため中間車がある唯一のサファージュ式です。湘南モノレールの特色については、汐留鉄道倶楽部の過去記事(http://www.47news.jp/feature/tetsudou/2016/12/283264.html)もご参照ください。