【4914】美冨久 大吟醸 極 15年氷温熟成(みふく)【滋賀県】

2022年09月25日
酒蛙酒蛙
滋賀県甲賀市 美冨久酒造
滋賀県甲賀市 美冨久酒造

【B居酒屋にて 全8回の⑧完】

 B居酒屋で先だって、2カ月に1回の異業種間利き酒会「TU会」の例会が開かれた。そのときはメンバー全員が6種類の酒を飲んだが、冷蔵庫を見ると、わたくしが飲んだことのない酒がまだまだ並んでいた。それらを飲むべく、例会から3日後に再びB居酒屋の暖簾をくぐった。

「誉池月」「無想」「花垣」「京の春」「夏ヤゴ」「光栄菊」「田酒」と飲み進め、最後にいただいたのは「美冨久 大吟醸 極 15年氷温熟成」だった。美冨久酒造のお酒は当連載でこれまで、「三連星」を2種類取り上げている。

 実はこの「美冨久 大吟醸 極 15年氷温熟成」、以前からB居酒屋の冷蔵庫に鎮座。誰も手をつけていなかった。わたくしは、ずっとこの酒に目をつけていたのだが、いかにも高そうな雰囲気。しかも15年古酒で大吟醸となると、わたくしのような酔脳でも高いことが分かる。だから、手をつけないできた。ところがこの日、わたくしの知り合いのグループがこの酒を冷蔵庫から取り出し飲み始めた。で、成り行きからわたくしもその輪の中に入り、お相伴にあずかることとなった。

 さて、ひょんなことから15年古酒の大吟醸をいただく。グラスに注ぐと酒の色は黄金色。かなり上手に熟成させたことが分かる。全国新酒鑑評会金賞受賞酒だから、そりゃ氷温でじっくり丁寧に熟成させるよね。15年古酒だから、古酒香がむんむん立っているだろう、と予想していたのだが、予想に反し上立ち香・含み香とも熟成香が意外に静か。つまり、紹興酒的カラメル的香ばしさが穏やかなのだ。これも、氷温でじっくり丁寧に熟成させた結果なのだろう。

 味わいの印象は、甘みがやさしいなあ、だった。甘みが比較的良く出ており、旨みは適度。酸は前に出てこない。余韻は辛みがすこし。長期熟成酒だけあって、実にやわらか、まろやかな口当たり。最初のうちは熟成香が穏やかなあ、とおもっていたが、次第に香ばしい熟成香が口の中に広がるようになる。長期熟成酒というと、「どうだ、参ったか」というようなタッチの熟成香むんむんの酒がよくみられるが、今回の酒は、濃醇でもなく分厚くもなく、旨みたっぷりでもなく、上品で大人しい熟成酒とでもいえばいいのだろうか。そんな印象を持った。クラシックタイプの、ややライトボディー。

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。

「世界中に熟成酒は存在。熟成によって生まれる素晴らしいお酒の世界、その過程の物語がそのお酒をより美味しく、価値のあるものにしています。
 日本では江戸時代の『訓蒙要言故事』の中に『新酒は、頭ばかり酔う。熟成酒は、からだ全体が潤うように気持ち良く酔う』と記されています。上手く熟成したお酒は口にすこぶる馴染むのです。まさに、熟成は時間が作る旨さの芸術です」

 裏ラベルのスペック表示は「全国新酒鑑評会金賞受賞酒、日本酒度+5、酸度1.1、醸造年月 平成17年2月、杜氏 井上昇(H16BY当時)、原材料名 米(国産)米麹(国産米)醸造アルコール、品種 山田錦100%使用、精米歩合45%、製造年月2020.11、アルコール分17度」。

 酒名および蔵名「美冨久」の由来について、日本の名酒事典は「酒名であり社名は水と自然の天恵の『美』、良質の米の豊穣を表す『冨』、伝統技術を伝える『久』の調和を意味してつけられた」と説明している。