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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4874】まんさくの花 星あかり 70【秋田県】

2022.8.18 18:18
秋田県横手市 日の丸醸造
秋田県横手市 日の丸醸造

【E居酒屋にて 全7回の④】

 E居酒屋のママさんからLINE連絡が入った。「月桂冠さんなど新しいお酒が入りましたよ。ぜひ、いらっしゃい」と。即刻、テイスティングに行った。

「月桂冠」の新シリーズ商品を飲む前に「菊の司innocentシリーズ」をいただく。その3種類を飲んだあと、4番目にいただいたのは「まんさくの花 星あかり 70」だった。

 日の丸醸造のお酒は飲む機会が非常に多い。当連載でこれまで、35種類を取り上げている。おそらく、当連載内の銘柄の中でトップクラスの多さだ。それだけ、「まんさくの花」を好む酒屋または居酒屋店主が多い、ということなのだろう。この銘柄は近年、酒質が目覚ましい向上をとげており、わたくしは高く評価しているところだ。ずばり美味しいお酒で、どの種類も期待を裏切らない高位安定性を誇っている。

 この酒は「純米」なのだが、ラベルには「巡米」と遊んでいる。これについて、瓶の裏ラベルは「さあ出かけよう、酒米を巡る旅へ」とのタイトルのもと「巡米70は、出荷月によって酒米が変わります。酒米以外は使用酵母など同条件で仕込みを行っています。2020.4星あかり、2021.7雄町、2021.8朝日、2021.9美郷錦、2021.10山田穂、2021.11愛山、2021.12百田、2022.1秋田酒こまち、2022.3亀の尾、2022.5山田錦(年月は出荷時期)」と説明している。

 つまり、「巡米シリーズ」は、使用する酒米が違う以外は全て同じ条件(精米歩合70%、酵母、仕込規模、原酒、一度火入、低温瓶貯蔵)でつくり、酒米の違いを飲み比べてもらおう、というもの。近年、各地の酒蔵でこの試みが行われ、わたくしは非常に好ましいことだ、とおもっている。

 今回の酒は、その「星あかり」編というわけだ。使用米の「星あかり」について、瓶の裏ラベルは系統図を示しながら以下のように説明している。

「当社が知る限り最も硬い酒米です。一般的に硬いことはデメリットなので使用する蔵は数蔵となってしまいましたが、当社では明確な個性を持つ米として今後も使用を継続します。星あかり70はシャープで美しい酸味を持ち、ゆっくり味わうとお米の甘みが顔を出す素敵なお酒に仕上がりました」

 また、蔵のホームページは「星あかり」について、以下のように説明している。

「星あかりは東北電力が地域振興のために開発した酒米で、当社が知る限り、今では全国で2社しか使っておらず、生産量は酒米全体の0.01%(農水省HPより)と絶滅寸前危惧種となっている希少米です。この米はとにかく硬く、大変扱い難い米ですが、当社ではこれは逆に唯一無二の個性なのではないかと考えています。大事に守っていきたいお米の一つです。
 星あかりはまだ東北に固有の酒米がない1997年に誕生した酒米です。当時はまだ東北で育つお米が少なく、美山錦が主流となっていました。美山錦に代わる東北のエースになることを期待されていましたが、東北の星にはなれませんでした。硬すぎて精米コストがかかる。醪で溶けにくい(とれるお酒の量が少ない)など、酒蔵から見れば扱いにくい酒米だったからです。
 ただ、酒造適性がすべてではないでしょう。硬さという明確な個性を持つ酒米であり、やや白ワインに近いシャープで繊細な味を出すには最適で、当社では星あかりを大事に扱っていきたいと思っています」

「星あかり」は、麒麟麦酒株式会社植物開発研究所(栃木県塩谷郡喜連川町)が1987(昭和62)年、「初星」に「美山錦」を交配し、88年に同所から譲渡された株式会社加工米育種研究所(宮城県仙台市)が雑種第2代種子から選抜、以後、加工米育種研究所の後を受け、東北電力が固定を図ったもの。品種登録者は、株式会社加工米育種研究所と東北電力株式会社。品種登録は2001年7月。

 さて、いただいてみる。上立ち香は、グレープフルーツをおもわせる。きれいな酸が非常に良く出ている。最初のうちは甘旨みがすくなめで、ソリッド感・ドライ感のある、すっきりした味わいに感じる。しかし、すこし飲み進めると印象が激変する。甘旨みをじわじわ感じるようになり、最終的に、甘旨酸っぱい味わいが口の中に広がり、ジューシー感もかなり出てくる。これは旨い!

 裏ラベルのスペック表示は「特定名称 純米 一度火入原酒、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合70%、アルコール分16度、原料米 秋田県産星あかり100%」。このほか、蔵のホームページは「日本酒度-1.0、酸度1.8、アミノ酸度0.9、酵母:秋田NO.12」と開示している。

 酒名「まんさくの花」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「昭和56年にNHKの朝の連続ドラマ『まんさくの花』が横手市を舞台に放映されたのを機会に誕生した、当社の代表銘柄です。当時主力商品だった『日の丸』のやや重みのある酒質とは違う、『きれいで優しい酒質』への挑戦を志して誕生した当ブランドは、現在でもなお珍しい、ひらがなの墨文字をラベルに採用しました。炭文字自体が珍しかった時代としては、非常に挑戦的なラベルでした。(ご揮毫は今関枝竹先生にお願いしました。(令和)天皇陛下の書道ご進講役を没年まで務められた今関脩竹先生の奥様です)

 また、蔵名および昔からの酒名「日の丸」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「創業元禄二年(1689年)。当社の社名でもある『日の丸』は、秋田藩主・佐竹公の紋所『五本骨の扇に丸印(日の丸・月丸)』に因んで命名されたと伝えられており、明治40年登録商標済の日本で唯一無二の酒名です」

酒蛙

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