【4837】雄東 55 純米吟醸 無濾過生原酒(ゆうとう)【栃木県】

2022年07月09日
酒蛙酒蛙
栃木県小山市 杉田酒造
栃木県小山市 杉田酒造

【Z料理店にて 全8回の①】

 近所のZ料理店に顔を出す。予約すると、わたくしが飲んだことがないだろうお酒を数種類さりげなく用意してくれる。その心意気がうれしく、月に1回のペースで暖簾をくぐっている。この2年間、コロナで大苦戦を強いられたが、少しずつではあるが、客が戻ってきたようだ。以前のようなにぎわいを早く取り戻してほしい、と切に願う。

 最初に選んだのは「雄東 55 純米吟醸 無濾過生原酒」だった。杉田酒造のお酒は、当連載でこれまで、「雄東正宗」4種類、「鷗樹」4種類、「発光路強力」3種類を取り上げている。さて、いただいてみる。

 セメダイン(酢酸エチル)とバナナ香が一緒になったような香りが来る。そして、酸がかなり出ている。白麹で醸した酒のような酸の出方だ。これらが第一印象だった。やわらかな口当たり。甘旨酸っぱい味わい。とくに甘みと酸が良く出ている。アルコール度数が16度だが、それほどには感じない。ワインと同レベルの13度くらいに感じる。おそらく、飲みやすい酒質なので、そう感じるのだろう。

 この蔵のお酒は、クラシックタイプのイメージだったが、今回のお酒ははモダンタイプ。ボディーは、ミディアムとフルの中間くらい。余韻は軽い苦み。実に旨い。キレも良く、飲み飽きしない。いくらでも飲めそうな気持ちになる酒だ。だからある意味、危険な酒ともいえる。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 栃木県産『強力米』100%使用、精米歩合55%、アルコール度数16度、製造年月2021.11(瓶詰日)、出荷年月2022.5(※出荷まで低温貯蔵)」。製造年月は瓶詰め日であることを明示しているのは非常に親切だ。素晴らしい。ただ単に製造年月だけを表示している蔵がほとんどだが、それだと一般の消費者には意味が分からないからだ。また出荷年月も明示し、それまで低温貯蔵していることも明らかにしており、これまた非常に親切だ。

「強力」は復刻米である。中川酒造(鳥取県鳥取市)のホームページは、「強力」について、以下のように説明している。

「『強力』は大正時代に鳥取県立農業試験場により在来種から選抜育成され、特産酒米として一時期には六千余町歩も生産されていました。強力米の歴史は古く、『山田錦』の祖先と言われている優良酒米『雄町』の更なるルーツであるという説もあります。昭和20年代の食糧難の時代、反当たりの収穫量の少なさ、尋常でない背丈、大粒の為倒伏の危険といった理由から、特産酒米『強力』は姿を消しました。(中略)
 鳥取大学農学部で、永年、少量だけ育種、保存されていた種籾から、やっと、わずかではありましたが、単一品種醸造ができる量まで収穫することができました。低タンパクな米質を重視するため、低収穫量を覚悟の上で減農薬・低窒素肥料などを心がけ、見事、酒米『強力』は復活しました。その強力米と清らかな水を使った地酒がここに蘇りました」

 蔵のホームページは、主銘柄「雄東正宗」の由来について、「創業当時の銘柄名は『優等正宗』でしたが、品評会で8回連続優等賞を受賞した際に当時の税務署長から『関東』の『英雄』と称えられた事から『雄東正宗』となりました」と説明している。ただ、わたくし個人的には「優等正宗」の方が素敵だとおもう。