【4684】辻善兵衛 辛口 純米酒(つじぜんべえ)【栃木県】

2021年12月29日
酒蛙酒蛙
栃木県真岡市 辻善兵衛商店
栃木県真岡市 辻善兵衛商店

【Z料理店にて 全5回の③】

 近所のZ料理店に顔を出す。「うちは居酒屋じゃないんだからね。居酒屋みたいにいっぱいの種類の酒を置いてないんだからね」と言いながらも、予約すると、わたくしが飲んだことがないだろうお酒を数種類さりげなく用意してくれる。その心意気がうれしく、月に1回のペースで暖簾をくぐっている。コロナで大苦戦を強いられていたが、第5波が下火になってから、お客さんが戻り始めた。以前のようなにぎわいを早く取り戻してもらいたい、と切に願う。

「大那」「花垣」と飲み進め、3番目にいただいたのは「辻善兵衛 辛口 純米酒」だった。辻善兵衛商店のお酒は、派手さはないものの、落ち着き感、安定感がある、と感じている。また、やさしくまったりした酒質、という印象を持っている。当連載でこれまで、5種類を取り上げている。今回のお酒はどうか。いただいてみる。

 上立ち香、含み香ともほのか。含み香にセメダイン(酢酸エチル)似の香りがごくほのかに混じる。やわらかな口当たり。旨みふくよかで、適度に出ている。酸と苦みで味を構成し、余韻は酸、辛み、苦み。中でも辛みと苦みの存在感がある。後味のキレが良い。酸も負けずに余韻を残す。「辻善兵衛」は、まったりした酒質のイメージがあったが、今回の酒は、まったりではなく、メリハリのあるお酒。実に飲み飽きのしないお酒だった。あれも辻善兵衛、これも辻善兵衛、か。

 裏ラベルは、【辻善兵衛】と題し、この酒を以下のように紹介している。

「『飲んだ全ての人に幸せを感じてもらいたい』下野杜氏を中心とした若い醸造家が日々研鑽し、思いを込めて醸した日本酒です。栃木の豊かな自然に磨かれた鬼怒川水系の伏流軟水を使用し、米の旨味を最大限に引き出すことにこだわりました。純米、軟水仕込みならではのソフトな口当たり、そして透明感のあるキレ味をお楽しみください」

 裏ラベルのスペック表示は「アルコール分16度、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合68%、製造年月2021.09」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 酒名および蔵名「辻善兵衛」の由来について、月井酒店(栃木県那須郡那須町)のウェブサイトは、以下のように説明している。「創業宝暦4年(1754年)、二百有余年の長きに渡り真岡の地で酒造りを行ってきた由緒ある酒蔵、辻善兵衛商店。現在の杜氏は第16代目辻善兵衛こと同蔵専務の辻寛之氏」。つまり、辻善兵衛は、この蔵の初代杜氏の名だったのだ。