×
メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4674】ゆきの美人 純米吟醸 山田錦 6号酵母 超辛 生酒(ゆきのびじん)【秋田県】

2021.12.13 16:30
秋田県秋田市 秋田醸造
秋田県秋田市 秋田醸造

【B居酒屋にて 全6回の⑥完】

 1カ月に1回のペースで足を運んでいるB居酒屋。常時約200種類の酒を置いており、1カ月たてば、冷蔵庫のラインナップがけっこう更新されているので、「日本酒津々浦々」の取材に好都合なのだ。コロナで大苦戦を強いられていたが、第5波が下火になってから、ようやくお客さんが戻り始めた気配が感じられる。以前のようなにぎわいを早く取り戻してもらいたい、と切に願う。

「白隠正宗」「黒龍」「鍋島」「川鶴」「山本」と飲み進め、最後6番目にいただいたのは「ゆきの美人 純米吟醸 山田錦 6号酵母 超辛 生酒」だった。「ゆきの美人は当連載でこれまで、16種類も取り上げている、飲む機会の多い酒だ。しっかりした味わいの、わたくしの口に合うお酒が多く、今後を大いに期待している蔵の一つだ。

 今回のお酒は、当連載【4139】で取り上げた「ゆきの美人 純米吟醸 超辛 山田錦 6号酵母」の生酒バージョン。では、いただいてみる。

 ドライな辛口酒。ドライな酒に感じる“コルク的含み香”がある。これらが第一印象。「日本酒の世界で辛口といえばドライのことじゃないか。馬から落ちて落馬的な、なにを寝ぼけたことを言っているのだ?」とお叱りを受けそうだが、さまざまな辛口酒を飲んできていると、辛口酒にも違いがあることに気づく。大別すると、「ドライな辛口」と「旨みを感じる辛口」だ。今回の酒は前者に属する、という意味で、この段落冒頭の表現をしたのだった。なお、日本酒の場合の辛口は、トウガラシの辛さではない。甘みが少ない酒の味わいのことだ。

 さて、テイスティングの続き。上立ち香は、ほとんど無い。さっぱりしたキレの良さ、それでいてやわらかな口当たり。酸がいい感じできれいに出ている。ドライ感があるため、旨みはすくない。日本酒度が+19もあるから、糖分はほとんどアルコールに置き替わっている。だから旨みがすくないのは当然の帰結。酒質はひとことで言うと、淡麗辛口。わたくしが知っている濃醇旨口の「ゆきの美人」とは真逆だ。なぜ、超辛シリーズを設けたのだろうか。消費者からリクエストがあったのだろうか。蔵元さんがラインナップを増やそうとしたのだろうか。いずれにせよ、あれも「ゆきの美人」、これも「ゆきの美人」だ。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、原料米 兵庫県産山田錦100%使用、精米歩合55%、アルコール分16度、日本酒度+19、製造年月2021.7」。

 この酒は、6号酵母を使って醸したのが特徴だ。6号酵母は、秋田市の新政酒造の蔵が発祥で、それまで不安定だった酒造りを安定したものにし、清酒酒造業を飛躍発展させた画期的酵母。清酒業界が今あるのは6号酵母のおかげ、と言っていいほどの金字塔的存在。新政酒造は、そのプライドのため6号酵母を使い続けている。

 新政酒造の蔵のホームページは、6号酵母について詳しく書書いているので、以下に転載する。

「五代目卯兵衛の採用した近代的酒造技法によって、自ずと選択された蔵付き酵母。これこそが、きょうかい六号酵母(新政酵母)です。この酵母の特徴は、中~低温での安定した増殖力と発酵力。また一般的な蔵付き酵母と比較して、驚くほど酒の酸度が低く、まろやかな味になる点。そして、なんといっても上品で馥郁たる香りです。  新政の酒が、新酒鑑評会主席を2年連続受賞するなど、その名声が頂点に達するに至った頃、五代目卯兵衛と花岡正庸氏はこの新酵母を研究の対象にすべきとの意見で一致しました。この頃、日本醸造協会は、失敗がつきものだった酒造りを改善しようと、高い醸造適正を有する酵母を選抜・培養し、全国の酒蔵に配布する取り組みを行っていたのです。
 そして昭和5年、花岡氏の弟子であった酒造技師、小穴富司雄氏が、新政のもろみからこの酵母を分離し培養することに成功。 後に、日本醸造協会より『きょうかい六号酵母』の名で発売されることとなったのです。発売直後から、この六号酵母は、全国の醸造家に画期的な一大転機をもたらす酵母となりました。
 以前の酵母とは比較にならない安定した醸造特性、また近代的な酒質が評価され、一躍、日本の醸造方法は、蔵付き酵母に頼る自然発生的なものから、醸造協会が頒布する培養酵母添加方式へと様変わりしたのです。速醸酒母と協会酵母という、現在の一般的な酒造方法は、この時、確立したといえます。
 このようなわけで、六号酵母は、 現在頒布されている協会酵母の中で一番歴史の古い酵母となっています」

酒蛙

関連記事 一覧へ